相続専門コラム

原戸籍と戸籍謄本の違いとは?相続に必要な範囲と取得方法

この記事をシェア

相続が発生すると、財産を遺した故人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本を収集することになります。
戸籍謄本を収集する過程で多くの場合必要になるのが、法改正前の古い様式で記録された「原戸籍(改製原戸籍)謄本」です。なぜ原戸籍謄本が必要になるかと言うと、現在の戸籍謄本とは記載事項が異なり、原戸籍謄本を確認しなければわからない情報があるからです。

今回は原戸籍と戸籍謄本の違い、取得方法や取得時の注意点をわかりやすく解説します。

原戸籍(改製原戸籍)とは、法改正前の旧様式の戸籍謄本のこと

原戸籍の図

原戸籍(改製原戸籍)とは、法改正前の旧様式で記録された戸籍のことで、呼び方は「かいせいげんこせき」です。 ただし、原戸籍(げんこせき)と呼ぶと現戸籍(げんこせき)と混同してしまう可能性があるため、一般的に相続の現場では「はらこせき」と呼ばれています

相続手続きでは法定相続人の調査などのために、財産を遺して亡くなった人(被相続人)が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本や相続人の現在の戸籍謄本などを取得します。このときに、原戸籍謄本が必要になることがあるのです。

<相続手続きで必要になる戸籍謄本の種類>
  • 被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本
  • 相続人の現在の戸籍謄本

戸籍謄本と原戸籍の違いは、様式の違いです。戸籍謄本は戸籍法改正のたびに様式が変わり、それに伴い記載事項も変わってきたという経緯があります。そのため、被相続人の年齢によっては、法改正前の旧様式である原戸籍謄本を確認しなければわからない情報があるのです。

たとえば、戸籍の様式が変わる前に除籍になった家族や離婚した元配偶者・その子どもなどがいる場合、現在の戸籍謄本を見てもその家族の情報は確認できません。

しかし原戸籍謄本を取得すれば、以前の家族の情報が記載されていることがあります。相続手続きでは、こうした「現在の戸籍謄本ではわからない・消えてしまった情報」を確認するために原戸籍謄本を取得しています。

原戸籍の様式について

2024年現在、相続の手続きで必要になる原戸籍謄本は、1947年(昭和22年)法改正に伴う「昭和改製原戸籍」か、1994年(平成6年)法改正に伴う「平成改製原戸籍」いずれかの様式が代表的です。なお、1994年の法改正では紙の戸籍原本管理から戸籍を電算化(コンピュータ化)して電子情報として管理することになりましたが、紙から電算化への切り替え完了時期は自治体によって違います。

2020年(令和2年)9月には国内のすべての自治体で戸籍の電算化が完了しましたが、戸籍を取得する自治体によって電算化した日(戸籍が改製された日)が異なる点に留意しましょう。

相続手続きには原戸籍(改製原戸籍)謄本が必須

戸籍謄本と原戸籍の図

相続の手続きでは、以下のような場面で原戸籍謄本が必要になります。

  • 相続人の調査と確定をするとき
  • 相続登記(不動産所有権移転登記)をするとき
  • 銀行の預金口座や有価証券など相続財産を名義変更するとき

相続が発生すると、まずは「誰が相続人となり財産を受け取る権利があるのか」を確認しなければ遺産相続の手続きを進められません。そこで被相続人の戸籍謄本を収集して家族情報を確認するのですが、前述したように現在の戸籍謄本だけでは除籍や離婚によって反映されていない以前の家族情報などがわかりません。

相続税の申告・納付期限は相続発生から10か月以内。遺産分割協議から相続税の申告・納付までを円滑に進めるためには、なるべく早い段階で相続人を調査して確定させることが重要です。

したがって、相続が始まったらすぐに原戸籍謄本を含めてすべての戸籍謄本を取得しましょう。なお、相続の場面で必要になる戸籍は家族全員について記載された「戸籍謄本」であり、「戸籍抄本」ではありません。

最寄りの役所で全国の戸籍がとれるようになった

オンライン申請の図

原戸籍謄本は、被相続人(財産を遺して亡くなった人)の本籍地があった役所でしか取得できませんでした。しかし2024年3月以降は本籍地以外の役所でも、全国どこからでも戸籍謄本を取得できるようになりました。

ただし、コンピュータ化されていない一部の戸籍等を除くとされています。また、最寄りの自治体によっては、事前予約が必要な場合もあるようです。各自治体に、事前に問い合わせておくとよりスムーズに取得できるでしょう。

また、将来的には戸籍情報をオンラインで確認できる「戸籍電子証明書」の発行も予定されています。

参考:法務省「戸籍法の一部を改正する法律について」

原戸籍(改製原戸籍)の取得方法|コンビニ取得は不可

原戸籍謄本の取得は、自治体窓口に赴いて取得するか、郵送で取り寄せるかのいずれかです。コンビニ取得はできません。

取得の流れは、まず被相続人の戸籍謄本を取得し、その戸籍謄本に記載されている情報をもとに以前の戸籍謄本を取得していく……という作業を繰り返します。この作業の過程で原戸籍謄本を取得することになるため、時間がかかります。

郵送で取り寄せる場合はさらに時間がかかるため、余裕をもって取得しましょう。

原戸籍を取得できる人

法定相続人の図

原則として、原戸籍謄本を取得できる人は以下のいずれかですが、以下にあてはまらない人でも取得できる場合はあります。

<原則、取得できる人>
  • 原戸籍に記載されている本人
  • 本人の配偶者
  • 直系血族:本人の父母、祖父母、子ども、孫など
<上記にあてはまらなくても取得できる場合>
・相続手続きに戸籍謄本が必要という正当な理由を証明できる場合
例:本人の傍系血族(兄弟姉妹、いとこ、叔父・叔母)が法定相続人になる場合や、成年後見人等の法定代理人、弁護士や司法書士など他人の戸籍を取得できる職権を持つ士業が取得する場合
・「原則、取得できる人」が書いた委任状を持っている代理人が請求する場合

配偶者や直系血族による原戸籍謄本の取得が難しい場合でも、正当な理由があったり、委任状を持っていたりすれば第三者が原戸籍謄本を取得することは可能です。

特に委任状は便利で、委任状さえあれば赤の他人でも原戸籍謄本を取得できます。時間がない人は、委任状を活用して信頼できる人に代理請求をお願いすることも検討しましょう。

本籍地の役所(場)での取得方法

役所で取得する図

亡くなった被相続人の本籍地がある自治体の窓口に直接出向いて取得する場合です。

取得時に必要なものは以下のとおりです。

交付請求書:
各自治体の窓口もしくはHP上にある

請求者の本人確認書類:
マイナンバーカードや運転免許証、パスポートなど

手数料:
通常の戸籍謄本は1通450円/改製原戸籍謄本・除籍謄本は1通750円

代理人が取得する場合の権限を確認する書類:
委任状や、(成年後見人が取得する際に必要な)後見の登記事項証明書など

詳細は、本籍地がある自治体のHPで直接確認してください。

最寄りの役所(場)での取得方法

住まいや勤務地の最寄りの自治体の窓口で取得する場合です。
取得時に必要なものは以下のとおりです。

交付請求書:
各自治体の窓口もしくはHP上にある

請求者の本人確認書類:
マイナンバーカードや運転免許証、パスポートなど

手数料:
通常の戸籍謄本は1通450円/改製原戸籍謄本・除籍謄本は1通750円

基本的には本籍地がある自治体窓口と同じですが、郵送や代理人による請求はできません。また兄弟などの直系血族以外も対象外となっています。

郵送での取り寄せ方

郵送での取り寄せの図

平日に自治体窓口に直接出向く時間がない場合には、郵送で取り寄せることも可能です。

郵送で原戸籍謄本を取り寄せる際に必要なものは以下のとおりです。

交付請求書:
各自治体のHP上にある郵送用の用紙を使用して記入・押印する

請求者の本人確認書類の写し:
マイナンバーカードや運転免許証、パスポートなどのコピー

手数料相当額の定額小為替:
通常の戸籍謄本は1通450円/改製原戸籍謄本・除籍謄本は1通750円。定額小為替はゆうちょ銀行または郵便局で購入可能

返信用封筒:
取り寄せる人の住所・氏名を記入し、返信用切手(定形外封筒50gまでであれば120円。速達希望の際はその旨記入し、速達料金290円を上乗せする)を貼り付けた封筒

代理人が取得する場合の権限を確認する書類:
委任状や、(成年後見人が取得する際に必要な)後見の登記事項証明書など

郵送で取り寄せる場合は、返信用切手の金額にご注意ください。原戸籍謄本の記載内容によって紙の枚数が異なり、通常の戸籍謄本よりも郵便物が重くなる可能性があります。切手の金額は、余裕を持って多めに貼り付けておくといいでしょう。

また普通郵便の場合、請求から実際に戸籍謄本が手元に届くまでに10日ほどかかります。必要に応じて速達料金の切手を貼り付け、速達での返送を希望してください。

コンビニは不可

コンビニは不可の図

マイナンバーカードによってコンビニで取得できる証明書は増えましたが、原戸籍はコンビニで取得できません

コンビニで取得できる証明書は、原則として最新の証明書のみです。そのため、最新の戸籍謄本であればコンビニでも取得可能ですが、改製原戸籍謄本や除籍謄本については原則として役所での取得に限定されています。

相続人調査で原戸籍を集めるときの注意点

相続人の調査・確定において原戸籍を集める際は、以下の点に注意しましょう。

相続人調査では被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本が必要

相続が発生して「誰が相続人になるのか」を調べる際には、亡くなった被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本を集めなければなりません。もしも生まれてから亡くなるまでに戸籍の改製があり様式が変わっていれば、改製前の原戸籍謄本と改正後の戸籍謄本が必要です。

まずは亡くなった時点の戸籍謄本を取得し、そこから原戸籍謄本をたどって取得していくという作業が必要になります。被相続人の転籍が多く収集が複雑な場合は、弁護士や司法書士など相続手続きの専門家に代理請求を依頼することも検討しましょう。

原戸籍に有効期限はないが金融機関提出用の戸籍謄本には期限指定があることが多い

原戸籍謄本には有効期限がありません。しかし、相続手続きのために銀行などの金融機関に戸籍謄本を提出する際は、「発行後3か月~6か月以内」と発行期限が決められていることがあります。金融機関によって発行期限の有無は異なり、戸籍謄本については期限を設けていないところもあります。

また、提出した戸籍謄本を返却してもらえるかどうかの対応も金融機関によって異なるため、事前に「発行期限」と「返却の有無」を確認しておきましょう。

原戸籍よくある間違い

ここでは、原戸籍謄本に関するよくある間違いをご紹介します。

原戸籍=出生から死亡までの戸籍という意味ではない

原戸籍謄本とは、法改正前の古い様式の戸籍謄本であり、出生から死亡までの戸籍情報を網羅したものではありません。被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を収集する過程で、原戸籍謄本の取得が必要になることがある、ということです。

原戸籍謄本を一つ取得すればすべての戸籍情報を確認できる、というわけではないので注意しましょう。

戸籍が移動していない人でも平成改正以前の人は、必ず改製原戸籍はある

被相続人に婚姻歴などがなく、生まれてから亡くなるまでに一度も戸籍を移動したことがないケースがあります。この場合は「亡くなった時点の戸籍謄本を取得するだけでいいのでは?」と思うかもしれませんが、被相続人が1994年(平成6年)の制度改正前に生まれている場合、出生時の戸籍は改製前の様式になっているはずです。

つまり、被相続人の誕生が1994年以前であれば、改製原戸籍謄本は必ずあると思っておきましょう。なお、平成の改正で行われた戸籍の電算化対応は、自治体によって完了期限が異なります。1994年以降、いつ戸籍の様式が変わったのかは本籍地のある自治体によって異なる点に気をつけてください。

誰でも原戸籍があるわけではない(若い人はない)

原戸籍謄本は誰にでもあるわけではありません。 原戸籍謄本は1994年のコンピュータ化される前の戸籍データですので、1994年以後に生まれている方にはありません。

  • 1994年より前に生まれた人:原戸籍謄本(改製原戸籍)と戸籍謄本(現在の形式のもの)の二種類になる
  • 1994年以後に生まれの人:戸籍謄本(現在の形式のもの)のみになる

相続税申告において必須書類となる戸籍といっても、生まれた年によって異なります。

原戸籍がなくても出生から死亡までの戸籍が複数枚になることはある

戸籍謄本の図

被相続人に原戸籍がなくても、出生から死亡までの戸籍謄本が複数枚になることがあります。

たとえば婚姻や本籍地の変更(転籍)などで他の市区町村から戸籍を異動している場合は、戸籍があった市町村ごとに戸籍謄本を取得しなければなりません。被相続人が若く原戸籍がないケースでも、亡くなった時点の戸籍謄本だけでは相続人となる親族すべてを確認しきれないことがほとんどです。

まとめ

相続が始まると被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本をすべて収集しますが、その過程で必要になることが多いのが法改正前の古い戸籍謄本=「改製原戸籍謄本(原戸籍謄本)」です。特に被相続人の出生年が1994年以前の場合は、平成の法改正前の原戸籍があるはずです。戸籍謄本収集の際は気をつけてください。

コンピュータ化されていない原戸籍謄本は、本籍地での市町村役場でしか取得できません。郵送での取り寄せは時間がかかるうえに、被相続人に婚姻歴や転籍が多い場合は取得する戸籍謄本が複数枚におよびます。

すべての戸籍謄本を取得するには時間がかかるため、相続が発生したらすぐに収集を始める、転籍が多く複雑そうな場合には弁護士や司法書士などの専門家に代理請求を依頼することも検討しましょう。

なお、原戸籍謄本を取得して相続人を確定できた後は、簡単な操作で相続税税額を計算できる「AI相続」をご利用ください。必要事項をフォームに入力していくだけで、誰でも無料で相続税額の計算・申告書作成が可能です。

おすすめ記事
【AI相続】登録から申告書完成までの使い方ガイド
元国税専門官よりAI相続へのメッセージ
マンガでわかるAI相続をみなと相続が運営する理由

【16,000人突破】相続税申告書が無料で作成できるソフト「AI相続」

AI相続ロゴ

税理士なし、予備知識なしでも、相続税申告は可能です。

相続専門の弊社が開発したソフト「AI相続」なら、簡単なフォームに沿って入力するだけで相続税申告書を作成できます。しかも本当に、無料で申告書の出力までできるんです。

まずは一度お試しください。
カンタン操作でラクに申告書作成ができる!完全無料「AI相続」

気になることがあれば「みなと」に聞いて下さい

困った人が立ち寄れる「みなと」でありたい。
そんな想いを胸に、私たちは仕事をしています。

相続税の分からないこと、相続した不動産や宝飾品についての悩みや、気になること。どうぞお気軽にご相談ください。
どのような解決方法があるか、最適なものはなにか、お客様のご要望に合わせてご提案します。

相続税申告を任せてしまいたい、という方には「シンプル相続」プランもご用意。
相続財産額に比例して価格が高くなるのが一般的ですが、弊社は比例しない一律料金368,000円(税込)
満足いただけるサービスを、納得プライスでご提供いたします。

みなと相続コンシェルへのお問い合わせはこちらです。

執筆者

服部ゆい

服部ゆい
京都市在住。金融代理店にて10年勤務したのち、2018年よりフリーライターとして独立。
金融・不動産・ビジネス領域の取材・執筆を中心に活動中。

アバター画像

この記事の監修者

石倉 英樹(相続専門の公認会計士・税理士)

監査法人トーマツ、独立系コンサルティング会社で業務の経験を積み、2013年に相続税専門税理士として独立。相続において大切なことを伝えるべく「笑って、学んで、健康に」をモットーに、社会人落語家「参遊亭英遊」としても活躍。高座に上がる回数は年間80回超。著書に『知識ゼロでもわかるように 相続についてざっくり教えてください』(総合法令出版)がある。 HP:埼玉・大宮あんしん相続税相談室

無料で使える相続税申告書ソフト『AI相続』

AI相続について詳しく

相続に関するセミナー開催中

セミナー一覧

サポート・お問い合わせ

03-6824-7371 【受付時間】平日9:00〜17:00

お問い合わせフォーム