相続専門コラム
相続税申告は、評価の難しい財産が多くなければ自分で済ませることができます。
今回は、一般の方が無料で使えるものから専門家向けのものまで、相続税申告書を作成できるクラウドソフトやプログラム、エクセルを紹介していきます。主要なソフトの機能や利用料金は以下の通りです。
目次
みなと相続コンシェルが運営・開発している相続税申告書作成ソフトで無料で申告書の作成・印刷が可能です。
わかりやすい入力フォームに沿って必要な情報(被相続人・相続人・相続財産等の情報)を入力するだけで、誰でも簡単に最新帳票に対応した相続税申告書を作成できます。出力された申告書はプリントアウトして税務署に提出可能です。
必要に応じてオプションで土地評価明細書作成機能も付けることができ、税理士による万が一の税務調査対応や土地評価の依頼をすることも可能です。
令和5年・令和6年度の帳票どちらにも対応しています。2024年8月時点で利用者数は15,000名を突破しました。
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岡野相続税理士法人が監修・運営している相続税申告書作成ソフトです。
ソフトのダウンロードやパソコンへのインストール不要で、申告書が作成できます。
会員登録不要で、おおよその相続税額を計算できる、相続税シミュレーションも用意があります。
2024年11月現在で利用者数は4,000名とのことです。
現在メンテナンスのため、復旧の目途は立っておらず利用停止中のようです。
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株式会社ビービーシーが運営している個人の方向けの遺産分割シミュレーションから申告書の作成までできるソフトです。
Windows専用ですが、相続人の情報、財産情報を入力することでシミュレーション、遺産分割協議書、相続税申告書の作成が可能です。パーソナル版では、かげ地補正等の一部機能が制限されています。
利用には年額5,390円かかりますが、時期によっては7日間の無料お試しキャンペーンをしているようです。
2024年11月現在で利用者数は3,000名とのことです。
令和6年度帳票には11月中旬以降対応予定のようです。
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今村圭一税理士事務所が開発・提供しているエクセルで相続税申告書の作成ができるサービスです。
入力できる相続人数に制限はありますが、計算式や関数が予め設定されているエクセル上で、作成された相続税申告書に自分で必要な情報を入力することで申告書の作成ができます。
帳票ごとにエクセルのタブが分かれており、会員登録や専用ソフトをインストールすることなく、エクセルを利用できる環境であれば、手書きで相続税申告書を作っていく感覚でどこでも利用できます。
正規版の利用には25,000円が必要ですが、税理士以外の方の一般の方が自分の申告のみに使う場合は18,000円で購入可能です。無料のお試し版も用意されています。
令和6年度の帳票にも対応しています。
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市川欽一税理士事務所が運営している相続税申告書作成ソフトです。
相続財産(基礎控除前)が8,000万円以下、相続人が配偶者か子供(3人以下)、生前贈与を受けていないなどの「税金はかからないけど申告は必要」というケースに特化しており、当てはまるケースにおいては使いやすいシステムになっています。入力フォームも不明な部分は税理士事務所に質問可能で、途中で税理士依頼に切り替えることもできます。
2024年11月現在はサービスを停止しているようです。
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株式会社タテムラが開発・運営しているクラウド形式の相続税申告書が作成できるソフトです。
相続税申告書はもちろん、土地及び土地の上に存する権利の評価明細書等の財産の評価明細書の作成も可能です。クラウド形式のソフトの為、インターネット環境とブラウザがあればどこでも申告書作成ができます。
個人プランと税理士プランが用意されており、個人プランは年額22,000円かかり、登録できる件数は1件です。
令和5年度の帳票に対応しています。
「WEB相続税申告書」のご利用はこちら
合同会社 Soft-j.comが提供しているエクセルとVBAを利用した相続税申告書を作成できるソフトです。
入力したい帳票を選択後、必要情報を入力していく流れになっています。入力に関するヘルプも別ファイルで用意されています。
ソフトを利用するにはExcel 2021/2019/2016が必要となります。ダウンロードは無料ですが、生命保険・退職手当金、債務・葬式費用、税額控除のデータを保存するにはパスワード解除のために購入が必要となります。
購入は税理士などの専門家のみとされており、価格は24,000円です。
令和6年度の帳票に対応しています。
「VBA 相続税申告書」のご利用はこちら
株式会社NTTデータが提供している達人シリーズの申告書作成ソフトです。
相続税申告書の作成から物納申請・延納申請や更正の請求に必要な帳票の作成も可能です。財産評価の達人や贈与税の達人などの達人シリーズ間でデータ連携することができます。
ダウンロード版、パッケージ版が用意されており、利用は年間ライセンス方式でProfessional Editionパッケージ版は46,970円、同ダウンロード版は43,890円。Standard Editionパッケージ版は27,170円、同ダウンロード版は24,090円です。
令和6年度の帳票に対応しています。
「相続税の達人」のご利用はこちら
株式会社日本デジタル研究所が開発・運営するソフトです。
相続税申告書、贈与税申告書のすべての帳票に対応している上、相続財産明細書や遺産分割協議書の作成も可能です。
年額利用料は33,000円、無制限版は132,000円ですが会計事務所専用製品であり、購入の際に税理士登録番号が必要です。
「JDL IBEXクラウド組曲Major 相続税・贈与税申告書」のご利用はこちら
辻・本郷ITコンサルティング株式会社が運営している相続税申告書作成ソフトです。
当初は選べるオプションとして「税理士による申告書レビュー」「電話相談」「土地評価サービス」などがありましたが、現在は廃止されてありません。
サービス利用料は55,000円であり、自分での作成を断念しグループの税理士依頼に切り替える場合には利用料の返金制度があります。7日間の無料体験が可能です。
2023年12月時点での利用者数は2,100名とのことです。
「better相続」のご利用はこちら
TASKI株式会社が運営している相続税申告書作成ソフトです。
利用登録後、必要な情報を入力しながらガイダンスに沿って資料を収集することで、申告書の作成ができます。わからないことがあれば、税理士に無料で相談することも可能です。
相続税額の計算までは無料です。相続税申告書を出力するには77,000円がかかりますが、作成した申告書の外形的なチェックを税理士にしてもらうことも可能です。
「TASKI」のご利用はこちら
株式会社ミロク情報サービスが提供する会計事務所向けの相続税申告書作成ソフトです。
相続税の申告書各表、修正申告用の申告書、延納申請書や遺産分割協議書などの各種申告書を作成することができます。試算処理では被相続人、相続人、財産情報をもとに遺産分割パターンを作成し、税額の比較をすることができます。
ソフトの利用料金は月払14,850円×最低利用期間6ヶ月の89,100円~です。6ヶ月未満で解約する場合は別途途中解約金が必要となります。
「ACELINK NX-Pro」のご利用はこちら
Inheritech株式会社が運営している相続税申告書作成ソフトです。
相続関係説明図、遺産分割協議書、土地の評価明細書、上場株式の評価明細書の作成にも対応しているようです。
一部の土地は非対応ですが、直感的な操作で土地を評価できるシステムを採用しているようです。
サービス利用料は99,000円、相続税計算機能は無料でお試しできます。
「エピログ相続」のご利用はこちら
株式会社ハンドが提供している相続税申告書、贈与税申告書、財産評価明細書が作成できるソフトです。
実際の帳票形式に沿った入力画面で作成できる特徴があり、各帳票は自動計算機能が搭載されています。
ソフトは新規購入で99,000円、2本目以降は41,800円で購入が可能です。また、無料体験版が用意されています。CD-ROM+ガイドブックセットは別途2,200円で購入できます。
令和6年分用の帳票にも対応しています。
「魔法陣 相続税」のご利用はこちら
セイコーエプソン株式会社が会計事務所向けに提供している相続関連ソフトで相続税申告書、贈与税申告書、財産評価明細書、その他関連書類の作成が可能です。
自動計算機能を搭載しており、路線価方式の土地の計算では路線価、地区区分、間口・奥行・角地区分等の土地情報を入力することで、各種補正率を自動判定してくれます。令和5年分用の帳票にも対応しています。
ソフトは新規購入が220,000円、別途年間保守料金が55,000円となっています。60日間の無料体験版が用意されています。
「相続税顧問R4」のご利用はこちら
相続税申告書は全15表で構成されており、付表をいれますと国税庁が一般用と定めているものだけでも26種類の帳票があります。
国税庁から「相続税の申告書のしかた」や記載例が発行されていますが、申告の経験がない人にとっては、申告書のどこにどのような数字を書けばいいかわからず、とっつきにくいかと思います。
ソフトを使えば、必要な情報を入力していくだけでソフトが自動で必要な帳票を作成・税額の計算をしてくれます。計算ミスもなく安心です。
相続税申告書は各帳票が他の帳票と連動しており、一箇所間違えて計算を進めてしまうと他の帳票にも影響が出るため修正に手間がかかってしまいます。
ソフトの場合だと間違いがあればその入力を修正するだけで、関連する箇所も自動計算され修正が済みますのでとても便利に使えます。
パソコンへインストールすることなくクラウド上で申告書の作成ができるソフトであれば、ログイン情報を共有することで、複数台のパソコンから申告書作成や確認をすることも可能です。
それぞれのパソコンから情報入力をすることができるので、遠方に住んでいる家族とも適切に情報を連携・共有をしながら申告書の作成ができます。
申告書作成ソフト、システムを利用して自分で相続税申告をする場合はご自身で相続税評価をする必要があります。
財産の評価方法については当社のコラムでも解説していますし、インターネット上で解説が多く出ています。また、一般的なことであれば国税庁の電話相談センターでも無料相談が可能です。
ただし、評価の難しい財産が多くある場合や第三者が入ったほうが家族の意見がまとまる場合、忙しくて自分で申告する時間が取れない方は、税理士に依頼することを検討しても良いでしょう。
▼相続税の税理士報酬は高すぎる!損をしない税理士を選ぶコツを徹底解説
今回は相続税申告書が作成できるソフトを紹介しました。
専門家向けだけではなく、一般の方でも利用できるソフト・サービスが数多くリリースされています。評価の難しい財産がなく、税理士に依頼するコストを下げたいと考えている方は今回紹介したソフトを利用して、自分で申告することを検討してみてはいかがでしょう。
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監査法人トーマツ、独立系コンサルティング会社で業務の経験を積み、2013年に相続税専門税理士として独立。相続において大切なことを伝えるべく「笑って、学んで、健康に」をモットーに、社会人落語家「参遊亭英遊」としても活躍。高座に上がる回数は年間80回超。著書に『知識ゼロでもわかるように 相続についてざっくり教えてください』(総合法令出版)がある。 HP:埼玉・大宮あんしん相続税相談室