相続専門コラム
故人が保有していた株式は相続の対象になります。しかし、その株式を所有していた証券口座がわからなければ相続手続きを進められません。
そこで今回は、故人の証券口座(取引証券会社)を調べる方法を解説します。「亡くなった家族が株式投資をしていたけど、その株がどこの口座にあるのかわからない」人は参考にしてください。
目次
通常、上場株式の売買は証券会社の証券口座を通じて行います。以下3つの方法で、故人が使用していた証券口座を特定しましょう。
「故人がどこの証券会社を使っていたか見当も付かない」場合は、①と②の方法で調べます。「使っていた証券会社の見当は付く」人は、③の方法に進んでください。
まずは、遺品やネットの足跡を元に使っていた証券会社を特定します。
株式取引には証券口座への入金が必要です。銀行の通帳明細を確認し、証券会社への入出金履歴がないかを確認してください。
野村證券や大和証券、SMBC日興証券など大手証券会社の場合は、専用カードを経由して提携ATMから証券口座への入出金ができるようになっています。証券会社の名前が記載された見慣れないカードが出てきたら要チェックです。
スマホやPC、タブレットなど、電子端末のデスクトップに証券会社のアプリがないか確認します。
インターネットブラウザの検索履歴やブックマークのチェックも忘れないようにしましょう。たまに取引する程度であれば、アプリは使わずブラウザー上で証券会社のページを開き、取引している可能性も考えられます。また、ネット証券はメールで取引報告書を送付することがあります。受信メールも一通りチェックしましょう。
遺品の書類や郵便物に、証券会社の書類や資料がないかも確認してみてください。
通常、証券口座を開設すると口座番号を知らせる書類や証券会社の約款・規定集などが一式で送付されます。それらの書類や金融商品のパンフレット、また「会社四季報」「取引報告書」「取引残高報告書」「上場株式等の配当金支払通知書」といった名前の書類があれば、証券会社名をチェックしましょう。
国内の上場株式を保有していると、株主宛に「株主優待に関するご案内」「株主総会招集通知」「決算報告書」などの株式関連書類が送付されます。
また、遺品の中に株主優待に関するものがある可能性もあります。財布の中に「株主優待券」「ご優待割引券」といった割引券はないか、遺品の中に企業名が印字された文房具やカレンダーなどはないか?くまなく探しましょう。
故人が確定申告をしていた場合、確定申告書の控えに証券会社の資料が添付されている可能性があります。
通常、株式投資で利益が出ても、新NISA口座や源泉徴収ありの口座を使用している場合は確定申告不要です。しかし、故人が源泉徴収なし口座や一般口座を利用している場合など、投資の状況によっては確定申告が必要になります。
上場株式の売却益や配当収入を確定申告する際、証券会社の「年間取引報告書」「取引残高報告書」などを添付します(※e-Taxは添付不要)。確定申告書の控えと一緒に、これらの書類を保管しているかもしれません。一度チェックしてみてください。
料金はかかりますが、証券保管振替機構(ほふり)に開示請求して故人の証券口座を調べる方法もあります。
ほふりであれば、故人が上場株式やREIT、ETFといった商品を保有していた証券会社・信託銀行の情報を一括で取得可能です。「てっとり早く調べたい」ときや「取引している会社が多そう」なときに活用できます。
株式を保有している証券口座を調べる場合、開示請求の方法は以下の手順で進めます。
【法定相続人が開示請求する場合】
なお、故人(被相続人)の口座を開示請求する際の費用は1件当たり6,050円(税込)です。
証券保管振替機構(ほふり)への開示請求でわかる情報は以下のとおりです。
ほふりでわかるのは、証券口座を保有している証券会社や信託銀行の名称です。株式の銘柄や保有残高など細かい情報はわかりません。また、投資信託や国債、外国株式など対象外の商品を保有している証券口座の情報は調べられない点に注意してください。
証券保管振替機構(ほふり)に開示請求しても調べられない情報は以下のとおりです。
たとえば、銀行や共済組合で投資信託や国債の取引をしている場合は調べられません。証券会社に口座はあるものの、外国株式や投資信託だけを保有している場合も同様です。これらの情報については、遺品を元に金融機関を特定し、個別に問合せるしか方法がないので気をつけてください。
取引のある証券会社を特定したら、個別に問合せて相続手続きを行いましょう。手続きの際に残高証明書を依頼すれば、株式の残高も確認できます。
証券会社ではなく銀行関連の資料が多かった場合は、銀行に問合せることで何かわかるかもしれません。取引の可能性があれば、証券会社に限らず相続手続きは必要です。
以下の書類を用意し、各金融機関に問合せてください。
金融機関や相続の状況によって求められる書類は違いますが、一般的な必要書類は以下のとおりです。
【遺言書はなく、遺産分割協議書がある場合の必要書類一般例】
一般的な上場株式は、証券会社を特定して連絡すれば相続手続き可能です。
しかし一部の株式相続については、証券会社に連絡するだけでは相続完了になりません。故人が以下の株式を持っている場合は要注意です。
故人が持っていた株式の種類 | 対応 |
---|---|
非上場株式 | 株式発行会社に確認する |
未受領の配当金がある上場株式 | 信託銀行に確認する |
紙の株券(いわゆるタンス株)や電子化前の単元未満株 | 信託銀行に確認する |
海外の金融機関で保有する株式 | 海外の金融機関に確認する ※専門家に代行依頼する方法も |
故人が会社経営者、または親族に会社経営者がいる場合、非上場株式を保有していることがあります。当然ながら非上場株式も相続の対象ですが、一般的に非上場株式は証券会社で取り扱いがありません。
遺品から非上場株式関連の書類を探す、経営者の側近など近しい人に尋ねるなどしてみましょう。
※ほふり(証券保管振替機構)でも、一部の非上場株式については取り扱われることがあります。
上場株式の配当金も相続の対象です。この配当金を「配当金領収書方式」で受け取っていると、未受領配当金が発生することがあるので気を付けましょう。
配当金領収書方式とは、郵便局や金融機関の窓口で所定の領収書と引き換えに配当金を受け取る方法です。この配当金を受け取る前に株主(被相続人)が亡くなると、証券会社の相続手続きだけでは未受領配当金を受け取れません。配当金の管理は証券会社ではなく、株主名簿管理人である信託銀行が管理しているからです。
遺品の中に「配当金領収書」と書かれた用紙を見つけたら、未受領配当金の可能性があります。なお、配当金領収書の受取期限を過ぎていても配当金を受け取る権利は失効しません。
受取期限が超過しているものも、未受領の配当金領収書も、手続きをすれば受け取れる可能性があります。株主名簿管理人である信託銀行に確認し、相続手続きを行いましょう。
一般的に上場株式は証券会社の口座に保管されていますが、まれに証券会社の口座にない上場株式があります。それが一昔前の「紙の株券(いわゆるタンス株)」や「単元未満株(端株)」です。
このようなときは、株式名簿管理人である信託銀行に確認しましょう。信託銀行の特別口座に該当の株式が保管されていれば、相続できるかもしれません。株主名簿管理人である信託銀行は株式関連の書類に記載されています。わからない場合は1社1社確認する必要があります。
【主な株主名簿管理人】
海外の金融機関で保有する株式も相続の対象です。
海外金融機関は現地の言葉や国の制度に沿って手続きしなければなりません。まずは、故人に海外の金融機関を紹介したFPやIFAなどの専門家はいないか、周囲に確認してください。
見つからない場合は、海外資産の相続に詳しい税理士など専門家に相談することをおすすめします。
株式や投資信託といった有価証券の残高と他の相続財産を合算し、相続税の基礎控除額以上の金額になる場合は相続税申告が必要です。
上場株式や投資信託の相続税評価額相続発生日時点における残高証明書を取得することで確認できます。証券会社で相続手続きを進める際、あわせて残高証明書を取得するといいでしょう。
残高証明書で確認した評価額は、相続税申告書第11表に記入します。第11表は合計表と付表があり、有価証券の申告については第11表(合計表)と第11表の付表2(有価証券用)を使用します。
詳細はこちらの記事で解説しているので、参考にしながら書き進めてください。
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服部ゆい
京都市在住。金融代理店にて10年勤務したのち、2018年よりフリーライターとして独立。
金融・不動産・ビジネス領域の取材・執筆を中心に活動中。
監査法人トーマツ、独立系コンサルティング会社で業務の経験を積み、2013年に相続税専門税理士として独立。相続において大切なことを伝えるべく「笑って、学んで、健康に」をモットーに、社会人落語家「参遊亭英遊」としても活躍。高座に上がる回数は年間80回超。著書に『知識ゼロでもわかるように 相続についてざっくり教えてください』(総合法令出版)がある。 HP:埼玉・大宮あんしん相続税相談室