相続専門コラム
亡くなった人に返済中の借金やローンがあると、相続人が返済義務を引き継ぐことになります。
亡くなった家族の借金に気付かず放置していると、相続放棄ができなくなり、ある日突然届いた借金の督促状に慌ててしまう可能性も。
そこで今回は、被相続人の借金やローンを調べる方法について解説します。
目次
相続の対象となる借金は、金融機関など法人からの借金と、それ以外の借金に大きく分けられ、その種類によって調べ方が変わってきます。
【1.金融機関など法人からの借金】
【2.それ以外の借金(個人からの借金など)】
※金融機関以外のもの
金融機関や消費者金融など、主にローン商品を提供している法人からの借金は、以下の信用情報機関に情報開示請求すれば把握できます。
信用情報機関とは、故人のローンやクレジットなど各種借入れに関する履歴・情報を管理している機関です。カードローンや自動車ローンなど各ローン商品、クレジットカードやキャッシングの残債など、一般的な借金を一通り把握できます。
信用情報機関によって管理している情報に違いがあるため、すべての機関に情報開示請求しましょう。
JICCは、消費者金融から地方銀行まで幅広い金融機関が加盟している信用情報機関です。消費者金融業界の情報センターとして設立された経緯があり、消費者金融やクレジットカード会社など貸金業者でのローン利用履歴を調べるのに適しています。
開示請求できる人 | 被相続人の法定相続人または二親等以内の血族、法定相続人等から委託を受けた弁護士・司法書士 |
開示請求方法 | 必要書類を郵送で送付して請求する |
開示請求費用 | 1,300円(税込) |
開示請求から報告書到着までの期間 | 郵送書類がJICCに到着後、7日~10日ほど |
JICCへの開示請求方法について詳細はこちらをご確認ください。
CICは、クレジットカードや消費者ローンに関する信用情報を扱う信用情報機関です。クレジット会社の共同出資によって設立された経緯から、クレジットカード会社や信販会社の加盟が多くなっています。主に、クレジットカード関連の利用履歴や各種リース、スマホや携帯電話の割賦契約を調べるのに適しています。
開示請求できる人 | 法定相続人または法定相続人から委託を受けた代理人 |
開示請求方法 | 必要書類を郵送で送付して請求する |
開示請求費用 | 1,500円(税込) |
開示請求から報告書到着までの期間 | 郵送書類がCICに到着後、10日~20日ほど |
CICへの開示請求方法について詳細はこちらをご確認ください。
全銀協は、一般社団法人と全国銀行協会によって設立された信用情報機関です。各銀行のローン商品の利用履歴を調べるのに適しています。
開示請求できる人 | 法定相続人または法定相続人から委託を受けた代理人 |
開示請求方法 | 必要書類を郵送で送付して請求する |
開示請求費用 | 1,500円(税込)+開示手続き利用券の発券手数料179円~300円 |
開示請求から報告書到着までの期間 | 郵送書類が全銀協に到着後、7日~10日ほど |
全銀協への開示請求方法について詳細はこちらをご確認ください。
個人信用情報への開示請求でわかるのは、金融機関や消費者金融など、主にローンを提供する会社での借入情報です。おまとめ払いを提供している一般の法人や個人からの借金、家賃・公共料金の滞納分、連帯保証債務については以下の方法で調べましょう。
まずは入出金明細で返済状況を確認しましょう。定期的に振込・送金している宛先はないか、公共料金や家賃の支払い履歴も要チェックです。
遺品の中に、借用書や賃貸借契約書といった借り入れに関する契約書を探してください。また、家賃や公共料金、税金を滞納している場合は支払いの請求書や督促状が届いているはずです。被相続人が亡くなってから届く郵便物やスマホのメールボックスも要チェックです。
被相続人の周囲にいた人に聞き込み調査する方法も有効です。特に被相続人が何らかの連帯保証人になっていた場合の「連帯保証債務」は、通常の調査では気付きにくいため気を付けてください。
たとえなんらかの連帯保証人になっていても、主債務者が問題なく返済をしていれば連帯保証人に連絡がくることはありません。そのため被相続人の連帯保証債務については、遺品を調べるか、周囲への聞き込みで地道に調べるほかありません。
「なんらかの借金はあるが、調べても詳細がわからなかった場合」「借金が多く、調べきれない場合」には、以下の対処方法があります。
対処法 | 詳細 |
---|---|
相続放棄 | 相続の開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所に申し立てれば相続放棄できる。相続人1人でも単独で申請できる |
相続放棄の期間伸長申し立て | 相続財産調査に時間がかかるなどの場合は、家庭裁判所に相続放棄の熟慮期間である「3か月」を伸長する申し立てができる(必ずしも認められるわけではない) |
時効 | 故人が長期にわたり返済していなかった借金について、相続した後も一定期間支払わなければ、時効が成立することがある。時効の成立には「長期間返済していない」事実と「時効を援用する手続き」が必要 |
相続放棄は相続人単独で申請できますが、プラスの財産も含めてすべての相続財産を手放さなければなりません。
調査によってプラスの財産が判明すれば、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ「限定承認」という方法もあります。ただし、限定承認は相続人全員での申請が必要です。どちらを選ぶ場合でも相続放棄の熟慮期間は短いため、相続が発生したら速やかに調査を進め、どうするか検討しましょう。
以下の借金については、申請等の手続きをすれば借金を引き継ぐ必要はありません。
多くの住宅ローンには団信が付いていますが、フラット35については団信の加入が任意です。フラット35で団信未加入の人が亡くなると、融資住宅を相続した人が住宅ローンの債務を引き継ぐことになります。
相続放棄をせずに借金やローンを相続する場合は、預貯金や不動産などプラスの財産から差し引いて相続税を計算できます。これを債務控除といい、債務の内容は相続税申告書第13表に記載します。
「種類」には、銀行借入金や未払金(滞納している水道光熱費など)、公租公課(税金や社会保険料のこと)と書いてください。その詳細は「細目」に、銀行名、固定資産税などと記入します。
第13表の書き方や控除できる債務の種類はこちらおよびこちらで詳しく解説しています。是非参考にしてください。
【自分で相続税申告】申告書第13,14,15表の記載方法を徹底解説!
【わかりやすく】相続税の債務控除とは?相続財産から控除できる債務や費用の種類を解説
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監査法人トーマツ、独立系コンサルティング会社で業務の経験を積み、2013年に相続税専門税理士として独立。相続において大切なことを伝えるべく「笑って、学んで、健康に」をモットーに、社会人落語家「参遊亭英遊」としても活躍。高座に上がる回数は年間80回超。著書に『知識ゼロでもわかるように 相続についてざっくり教えてください』(総合法令出版)がある。 HP:埼玉・大宮あんしん相続税相談室