相続専門コラム
亡くなった人のスマートフォンは、相続手続きが一通り終わるまでは処分や解約をしないように気をつけてください。
近年のスマホは単なる連絡ツールにとどまらず、各種決済や本人確認など、日常生活の基盤としての役割を持っています。また、端末本体は故人の相続財産であり、遺産分割協議の対象です。相続人が独断で処分してよいものではありません。
本記事では、被相続人のスマホを解約・処分してはいけない理由と相続時の適切な対応を解説します。パスワードロックの解除や生前対策も解説しているため、亡くなった人のスマホの扱いで困っている人はぜひ参考にしてください。
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亡くなった人のスマホは、「端末」「データ」「契約」の側面で対応が異なります。

スマホ端末の本体は亡くなった人が所有していた「動産」として、相続財産に含まれます。
相続発生後は相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が端末を取得するのか決めなければなりません。よって、相続人の独断で勝手な処分はできません。
なお、端末の購入代金を分割払いにしていた場合、その残債も相続財産(債務)として相続人が引き継ぐことになります。

通常、亡くなった人のスマホには複数のデジタルデータやアプリケーションが保存されています。このうち、金銭的価値のある「デジタル遺産」は相続財産に含まれ、原則として相続税の課税対象です。
【スマホ内データの扱い】
| デジタル遺産 (金銭的価値がある) | デジタル遺品 (金銭的価値がない) | |
|---|---|---|
| 対象の資産 | ネット銀行の預金やスマホ決済アプリの残高など | スマホに保存している写真や動画、文書、アプリなど |
| 課税の有無 | 原則、課税対象 (一部ポイントや電子マネーを除く) | 原則、課税対象外 (著名人や作家の遺品を除く) |
ただし、金銭的価値のあるデジタル遺産のうち、一部のポイントサービスや電子マネーは故人にのみ権利が与えられます。遺族が権利を引き継げない、つまり相続できない財産になるため、相続税の対象にはなりません。
「デジタル遺品」は相続財産ではないとはいえ、遺族や関係者にとっては故人にかかわる大切な遺品です。勝手に処分すれば揉めることもあるため、関係者間で扱いをよく話し合いましょう。また、故人が著名人だと遺品に金銭的価値が付くケースもあり、注意が必要です。
デジタル遺産の相続はこちらの記事でも解説しています。参考にしてください。

亡くなった人のスマホ契約の料金は、原則として相続人が支払義務を引き継ぎます。遺産分割協議の前に請求がきた場合は、相続人の誰かが代表して支払い、遺産分割後に精算する流れが一般的です。
このとき相続財産から料金を支払えば、相続を承認したとみなされることがあります。相続放棄が難しくなる可能性があるため、注意してください。
なお、相続人が希望すれば名義変更によって電話番号の承継が可能です。詳しい対応は通信事業者(キャリア)によって異なりますが、承継できるのは相続人か家族に限られるのが一般的です。

亡くなった人のスマホ契約の解約・端末・データの処分は、相続手続きが一通り終わってから行うようにしてください。主な理由は次のとおりです。

スマホ端末は被相続人の相続財産に含まれ、遺産分割協議の対象になります。
相続手続きの前に端末を売却・廃棄したり、通信契約を解約したりすると、相続を「単純承認」したとみなされることがあります。場合によっては、相続放棄できなくなる場合があるため要注意です。相続財産から料金を支払う行為も同様です。気をつけてください。

スマホはデジタル遺産を含む財産調査に欠かせません。
オンラインでサービスを提供する事業者の場合、カードや紙の書類などの発行が一切ないことがあります。そのため、遺族が財産の存在にまったく気付かないケースもあるでしょう。故人のスマホがあれば、アプリ名や検索履歴などからこうした「見えにくい財産」を特定しやすくなります。

亡くなった人がバックアップを取っていない場合、端末の処分とともにスマホ内のデジタルデータが失われます。
データの中には故人の写真や動画など、遺族にとって大切な思い出や記録が含まれている可能性があります。端末の処分については、関係者と相談のうえ慎重に行うようにしてください。

スマホの通信契約を解約すると、亡くなった人の関係者や利用サービスからの連絡を受け取れません。
親しい友人や仕事の関係者、サービス事業者などから連絡があれば、訃報の事実を伝えられます。また、連絡を通じて相続財産や利用サービスを特定できれば、相続手続きもスムーズに進められます。
さまざまな手続きのためにも、本人の死後も一定期間通信契約は維持し、電話やSMS、キャリアメールを受け取れるようにしておきましょう。

故人のスマホは相続財産であり、相続人全員の合意があれば端末の内容を確認できます。しかし、多くのスマホはセキュリティが強固です。たとえ遺族が希望した場合でも、通信事業者(キャリア)やメーカーは原則としてロック解除に対応していません。

パスワードロックを解除できないスマホの対処方法は次のとおりです。
まずは、思い当たるパスワードや遺品などの手がかりもとに解除を試みてください。それでも解除できない場合は、故人が使っていたAppleやGoogleのアカウントでアクセス申請する方法があります。OSによって申請の流れが異なるため、別々に解説しましょう。
スマホがiPhoneの場合、対処法は主に以下の2つです。

故人があらかじめ相続人を「故人アカウント管理連絡先」に指定している場合のみ、利用できる方法です。指定された人は、あらかじめ設定された「アクセスキー」と「死亡証明書」を用意すれば、こちらのページから故人のアカウントへのアクセス申請をリクエストできます。詳細はAppleのサイトにてご確認ください。
Apple|故人アカウント管理連絡先としてAppleAccountへのアクセスを申請する
なお、故人アカウント管理連絡先がアクセスできるデータは以下のとおりです。

故人アカウント管理連絡先として指定されていなかった場合は、法的な手続きによって申請をするしかありません。
この場合、家庭裁判所への申し立てを行い、所定の法的書類を用意したうえで故人アカウントへのアクセス申請をリクエストします。Appleによる審査が行われるため、申請が却下される可能性もあります。詳細はAppleのサイトでご確認ください。
Apple|亡くなったご家族のApple Accountへのアクセスを申請する方法
故人のスマホがAndroidでGoogleアカウントを利用していた場合、対処法は主に2つです。

Googleアカウントは一定期間使われないと、あらかじめ連絡先として指定された相続人に対して、故人のアカウントデータへのアクセス権利が付与される仕組みがあります。この仕組みが「アカウント無効化管理ツール」です。故人が相続人をあらかじめ連絡先に指定していれば、アカウントに紐付くデータにアクセスできるようになります。詳細はGoogleのサイトにてご確認ください。
指定された相続人がアクセスできる主なデータは以下のとおりです。
なお、あらかじめ設定されている内容によってはアクセスできるデータには限りがあります。被相続人が「Googleフォト」「Googleウォレット」のみを共有データとして指定していれば、相続人はGメールにアクセスできません。

アカウント無効化管理ツールで連絡先として指定されていない場合は、改めて故人のアカウントに関するリクエストを送信できます。申請内容をGoogleが適切と判断すれば、故人のGoogleアカウントは閉鎖され、場合によってはコンテンツデータの提供も受けられます。
ただし、データの取得をリクエストするには米国の法律にもとづいた裁判所命令が必要です。Googleによる審査が行われるうえ、リクエストが却下される可能性もあります。詳細はGoogleのサイトでご確認ください。

亡くなった人のスマホの扱いで困るのは遺族です。遺族がさまざまな手続きや財産調査をスムーズに行うためにも、次の生前対策をおすすめします。

もっとも有効な生前対策は死後にパスワードを共有する方法ですが、スマホの中身を遺族に見せることに抵抗がある人は少なくありません。その場合は財産目録や契約サービスの一覧表を作成し、死後の手続き先がわかるようにしておきましょう。
スマホの相続について、詳細はデジタル遺産の記事でも解説しているため、参考にしてください。

スマホの相続について、よくある質問をQ&A形式で解説します。
相続人が個別に支払ったスマホ料金は、遺産分割協議後に相続財産から精算してください。なお、故人の預貯金から料金を支払う場合、相続を承認したとみなされることがあります。相続放棄の可能性がある人は、遺産から支払う行為は避けるようにしてください。
事業者ごとの対応は以下のとおりです。
上記の事業者であれば、契約者死亡時に名義変更を行うことで電話番号を承継可能です。詳細は各事業者にお問合せください。
docomoやauなど、一部の事業者では1年以内の解約について1,100円程度の契約解除料を設定しています。ただし、死亡時による解約であれば契約解除料の請求はありません。
なお、かつて多くのキャリアで生じていた高額な契約解除料は、2022年施行の電気通信事業法改正によって撤廃されています。
京都市在住。 金融代理店にて10年勤務したのち、2018年よりフリーライターとして独立。 金融・不動産・ビジネス領域の取材・執筆を中心に活動中。