相続専門コラム
確定申告をする方には便利で馴染みのあるe-Taxですが、e-Taxソフトであれば相続税申告をすることもできます。
以前は非対応だった相続税の修正申告書の送信も令和3年からは可能となり、税理士が利用する上での利便性は向上しているのですが、実は個人の方が自分で相続税申告をする場合はe-Taxはおすすめできません。
このコラムでは、個人がe-Taxを使って相続税申告をする場合のメリットとデメリットを解説します。
目次
結論から言いますと、相続税申告を個人がe-Taxで行うメリットはデメリットに比べて小さく、個人の場合はe-Taxを利用しない形での相続税申告書の作成と提出がおすすめです。
税理士にとっては非常に使い勝手がいいかというと、それほどでもありません。
実際にe-Taxの利用率(国税庁発表令和3年度)は法人税の87.9%、所得税59.2%なのに対して相続税は23.4%にすぎません。
これまで税務署と郵送でやり取りをしていた分が電子化できるのは確かにメリットなのですが、e-Tax上で送信できる添付書類の容量は十分ではなく、結局郵送でのやりとりをゼロにできません。
また、税理士が申告を完了した後にお客様にご報告する際にも、税務署の受付印が押された状態の相続税申告書の方がお客様の納得感があることも手伝って、相続税申告だけは電子申告を利用しない税理士が大多数なのです。
では、どういう人が相続税でもe-Taxを利用するメリットがあるのでしょうか。e-Taxの長所と短所を詳しくみながらご説明していきます。
個人が相続税申告をe-Taxを通してやることが魅力的でない主な理由は以下の4つです。
相続税をはじめとする税務申告は、本来は一人ひとりが単独で行うことが基本です。
ただ、相続税の計算は自分が受け取った額だけでは決まらず、全体の遺産総額によって左右されるという性質上、相続人全員が情報を連携する必要があります。
そのため、相続税申告書の提出についてのルールを定める相続税法第27条においても「共同して提出することができる」と規定し、共同での申告書の作成を実質的に推奨しています。この規定が背景にあり、相続税申告書は一つの申告書で相続人全員が共同で申告することが認められています。
しかし、e-Tax(電子申告)はシステムの基本設計として個々人が申告するという仕組みになっているため、共同で申告するということができません。
そのため、例えば上図のように長男がe-Taxで相続税申告をしてもそれだけでは家族の申告は完了せず、他の相続人は別に申告をしなければなりません。確定申告している人であればe-Taxに馴染みがあるかもしれませんが、相続人全員がe-Taxを使いこなせる家族というのは少ないのではないでしょうか。もちろんe-Taxでの申告と書類での申告は併用できますから、長男がe-Taxを利用した場合でも他の家族が書類を作成して共同で申告をすることもできますが、どうせ書類を作成するのであれば長男もいれて全員で共同申告をする方がシンプルであり、長男がわざわざe-Taxで申告する理由はありません。
次にe-Taxで相続税申告をする上で不便に感じるのは自動計算機能がないことです。
財産情報や家族情報をいれると自動的に税額を計算してくれるような機能は一切ありません。税理士向けの高額なソフトには基礎的な計算とその結果をe-Taxに流し込む機能がありますが、個人の方がe-Taxを利用して相続税の申告書を作成する場合には一つひとつ手入力で数値を入力していく必要があります。
一つひとつのマスに入力するのはいいとしても、それぞれのマスに入れるべき正しい数値をあらかじめ計算するのは相当大変であり、手計算ですとミスも当然起こります。
そのため当たり前ですがe-Tax経由の申告書の審査が緩くなるということもありません。税務署の現場においてはe-Tax経由の申告書の審査は画面上で行われ、書類で提出された申告書の審査とは物理的な形式は異なります。しかし、計算ソフトの裏付けがないと思われる個人のe-Tax経由の申告書についての審査プロセスは手書きの申告書の審査プロセスと全く変わりません。
所得税の確定申告ではe-Taxを利用すると、社会保険料控除の証明書など、いくつかの書類の省略が認められていますが、相続税の申告ではe-Taxを利用しても省略できる書類がありません。
しかも、e-Taxを通して送信できる上限容量は1回あたり8MBで、総合計も88MBと決まっています。そのため、多くの添付資料が必要な場合はDVDなどの光ディスクに記録して税務署に結局郵送する必要があります。
不便とか便利という以前の問題で、以下に該当する場合は一般の個人がe-Taxを利用して申告することはできません。
・相続人の人数が10人以上の場合
・数次相続の場合
・相続人に被相続人より先に亡くなっている相続時精算課税適用者がいる場合
・修正申告を出すべき相続人の中に死亡した方がいる場合
・相続人に未成年者がいる場合
・相続人に成年被後見人がいる場合
・相続人に非居住者がいる場合
(出典)国税庁 e-Taxの利用ができない申告書
尚、以前は非対応だった相続税の修正申告書は令和3年1月4日より送信可能となりました。
さて、ここまで短所ばかり解説してきましたが、個人であってもe-Taxを利用することで得られるメリットもないわけではありません。しいてメリットをあげるとすれば以下の3つでしょう。
通常、e-Taxは年末年始を除き、火曜日から金曜日は24時間、土曜日から月曜日および祝日は朝8時半から深夜0時まで稼働しており、場所と時間を問わずに申告が可能です。
ただ、時間と場所を問わないといっても、紙で書類作成するかたちでの申告の場合も郵送による申告が可能なことを考えると、ポストには24時間投函できるでしょうから基本的にはe-Taxだけの優位性とは言えません。
しかし、本当に申告期限ぎりぎりの場合は、深夜まで送信可能なことは便利な場合があります。
申告期限までに申告ができないと無申告加算税などの大きなペナルティがかかりますが、申告期限最終日の深夜に投函してしまうと、翌日の消印となり間に合いません。しかし、e-Taxならばそのような場合でも滑り込みで申告することが可能です。
相続税の申告書を提出する際には様々な添付書類をつけなければいけません。それらの添付書類は基本的にすべてコピーでも認められますが、遺産分割協議で相続する場合に添付必須となる印鑑証明書だけは紙での申告の場合は原本でなければならず、原本還付もしてもらえません。
しかし、e-Taxによる電子申告の場合は、印鑑証明書についてもスキャンしたイメージデータでよいとされていますので、原本の提出は必要ありません。スキャンしたデータがあればe-Taxによる申告をすることで印鑑証明書を取得する費用を節約できます。
ダイレクト納付とは、事前に税務署に届け出をしていればe-Taxを利用したあと簡単な操作で即時又は期日を指定して相続税を収めることができるものです。自宅に居ながら納税ができますので、納付書をもって金融機関に納税のために出向く必要がないため便利です。
ただ、2017年1月から相続税もクレジットカード払いができるようになっていますのでe-Taxを利用しない場合でもオンライン上で納付することができ、e-Taxを利用した人だけのメリットとはいえません。
尚、クレジットカードによる納付は所定の手数料がかかりますが、手数料以上にポイントなどがたまるカードを利用すればお得になります。
さて、上述のように個人の場合は相続税の申告をe-Taxでやるメリットはほぼないといえますが、相続人が一人だけの場合はe-Taxでの申告もよいかもしれません。
その場合は何に留意したらよいでしょうか。
個人がe-Taxで申告する上で最大のデメリットは共同申告ができないことと、自動計算機能がないことです。しかし自動計算の部分は外部のソフトを使うことで対応可能です。
相続人が一人であり共同申告をする必要がないのであれば、外部のソフトの使用と組み合わせてe-Taxを使った申告を試してみてもよいかもしれません。
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今回は相続税申告とe-Taxについて解説しました。
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