相続専門コラム

【元国税局職員に聞く】相続税申告の実態とセルフ申告という選択肢

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しかし、実際に使用する前には
「本当に税理士に頼まないで大丈夫か」
「自分で相続税申告をしたら、税務調査が入らないだろうか」
といった疑問や不安があったというユーザー様からの声をいただきました。

そこで、今回は国税専門官として働かれていた小林義崇さんに、そういった疑問や「AI相続」を
実際に使ってみた感想をうかがいました。

国税専門官としてのプロフィール

小林さんの経歴を教えてください。

2004年に新卒で東京国税局の国税専門官として採用され、都内の税務署や国税局に勤務しました。2017年に退職する直前は、東京国税不服審判所に出向し、税務処分の適法性を審査する部署で仕事をしていました。

国税局の職員は、採用後に、それぞれ「個人課税」「資産課税」「法人課税」「徴収」のいずれかの系統に割り振られることになっています。私の場合は資産課税の系統で、相続税と贈与税、不動産や有価証券の売買に関する所得税を扱っていました。

相続税について、具体的にどのような仕事をしていたのですか。

税務署の職員としては、相続税の申告書審査や相談対応に加え、税務調査も担当しました。東京国税局の課税第一部資産課税課に異動してからは、税務署の担当者だけでは判断が難しい、法律上の論点を整理する仕事を担当しました。相続税に関しては、ひととおりの業務を経験したと思います。

相続税申告の「イメージ」と「実態」

専門家に依頼せず、自分で相続税申告することについてどう思いますか?

所得税の確定申告と比べて、「相続税の申告は難しい」「税理士に依頼すべき」といったイメージを持たれているようです。これは、多くの人にとって、相続税を経験するのは一生に一度か二度ということが影響していると考えられます。所得税の確定申告であれば毎年のことなので、自分でやろうという人も少なくないのですが、相続税については税理士に依頼されるケースが大半です。

ただ、私が税務署で窓口対応をしていた頃を振り返ると、相続人だけで申告書を完成させている方を目にすることはありました。相続税に関して分からないことがあれば、国税局電話相談センターや税務署の窓口に相談すれば無料で回答を得ることができますから、税理士に依頼せずに相続税の申告をするのは決して不可能ではないでしょう。

そもそも、相続税の申告の難しさは、財産や債務の状況によってまったく異なりますから、税理士に依頼するまでもないケースは少なくないはずです。数多くの銀行口座や不動産、有価証券などを相続するなら、申告書の作成が大変なことは事実ですが、そうした資産家はごく一部でしょう。銀行口座は2、3程度、不動産は自宅のみ、という一般的な相続財産であれば、意外とあっさり相続税の申告を終えられると思います。

小林義崇さん

「相続税の申告は怖い」というイメージがあるようですね。

申告を間違えたときに税務調査が入ったり、重たい追徴税が課されたり、というイメージから、相続税の申告に不安を抱えている人は少なくないようですね。

そもそも税務調査は任意で行われるもので、申告書や添付書類だけでは分からないことを確認することを目的としています。ですから、税務調査はあらかじめ日時を予約して行われ、不明点が確認できれば1日で終わるのが一般的です。

税務調査はそんなに恐ろしいものではないということですね?

すべての人に税務調査が入るわけではありませんし、連絡もなく自宅に突然税務職員が押しかけてきたり、多額の追徴税で生活が困窮する事態になったり、といったことはまず考えられません。税務調査を理由に相続税の申告を恐れる必要はありません。

また、追徴税についても、期限内に申告や納税をすべきだった税額に比べて、不足する税額に一定割合を掛けて計算するものですから、相続財産が追徴税でなくなるようなことはありえません。もちろん、期限内に正しく申告納税をするのが一番ですが、過度に心配する必要はないでしょう。

それにしては、金融機関の広告や雑誌の特集をみていると「相続税申告は大変」というう印象を受けます。

広告や雑誌はあくまでビジネスのために作られているものなので、受け止め方は慎重であるべきだと考えます。繰り返しますが、相続税の大変さは、相続財産の内訳や家庭状況によって異なります。被相続人が6億円を超えるような膨大な資産を残されているのであれば、最高税率が適用され、少しの間違いが税額に大きく影響することもありますが、そうしたケースは稀です。1億円くらいの相続財産であれば、基礎控除額や特例によって税額がゼロとなることもありますからね。

相続税の申告が大変かどうかを適切に判断できるのは、被相続人の財産などの状況を知る相続人自身にほかなりません。まずは各家庭で簡単に相続税のルールを知って、きちんと相続と向き合うことが大切だと思います。

税額を少なく申告した場合は税務署から指摘が入ると思いますが、逆に本来より多くの税額を申告した場合は、税務署は指摘してくれるのでしょうか?

書類を見て明らかに多くの税金を申告している場合は、連絡を入れます。実際、私が税務署で相続税の申告書を審査していたときには、多めに申告をしていた人に連絡をしていました。たとえば単純な計算間違いや、桁の記載誤りなどがあれば、相続税額を減額するために訂正申告や更正の請求の案内をします。

もっとも、提出された情報から、「明らかに間違って申告をしている」と判断できなければ、こうした案内はないでしょう。ひとつ、土地の評価について例を挙げてみたいと思います。

土地の評価については、国税庁が定める路線価に基づく評価が原則ですが、不動産鑑定を行うなどして、土地の実情に合わせた評価額で申告をすることも可能です。しかし、路線価に基づき申告をされている以上、税務署は「不動産鑑定をすれば相続税額が減りますよ」といった案内をすることはありません。なぜなら、路線価による申告も適法なものであり、不動産鑑定をするだけの情報もないからです。このように、複数の選択肢がある場合は、納税者自身で最適な内容で申告をする必要があります。

AI相続の強み

「AI相続」は、一般の方でも使えると思いますか?

そうですね。
AI相続は、相続税の申告書作成のハードルを下げてくれるものだと思います。相続税の計算は特殊な面があり、被相続人が残した財産や債務に応じて、「相続税の総額」を計算したうえで、その税額を、各相続人の取得した財産の割合に応じて分配するというしくみになっています。これは所得税などにはない手順なので、理解が難しいポイントです。

その点、AI相続を利用すれば、こうした計算も自動で、しかも無料で行ってくれるので、安心です。実際に相続が発生して相続税の申告書を作るときはもちろん、将来の相続税に備えて相続税のシミュレーションをするような場面でも使えそうですね。

私がとくに便利と感じたのが、「必要な帳票を自動的に出力してくれる」という点です。普通は、自分で相続税の申告をしようとすると、国税庁のホームページに掲載されている60種を超える帳票から必要なものを探す必要があるのですが、この手間をAI相続では解消できます。

税理士に依頼した方がいいのは、どんな人?

税理士の報酬はとても高いと感じますが、どのような仕事をしているのでしょうか。

税理士によってサービスの内容は異なるので一概には言えませんが、一般的には申告書の作成代行を中心に、税務調査時の立ち会いや、財産目録の作成などの付随業務も行われています。さらに弁護士と連携して、遺産分割協議書の作成や、遺産分割に争いがある場合の訴訟対応などもサービスにしているところもあります。

料金体系についても、やはり税理士によって様々ですが、一般的には遺産総額に応じて報酬額が上がっていく仕組みが採用されています。ここに、不動産など、計算が複雑な財産があるとオプション料金が加算されるようです。

相続税の場合、税理士の報酬はときには数百万円単位に上りますから、人によっては割高と感じるかもしれません。これは、遺産総額に応じた料金体系の弊害とも言えます。極端な話、相続財産が、1億円の不動産というケースと、100億円の預貯金というケースで比べると、申告書作成が簡単なのは後者です。にもかかわらず、後者のほうが税理士報酬は高くなります。

サービスの料金が、作業量や付加価値に応じた対価と考えると、遺産総額に応じた料金体系がそぐわない場面は少なくないと思います。税理士に依頼される場合は、サービスの中身と料金を比較して、見合うものかを考えるべきなのではないでしょうか。何も考えず、いきなり税理士に丸投げ、というのは勧められません。

相続税申告書に税理士の印鑑があるかどうかは、税務署の審査に影響しますか?

税理士の印鑑があってもなくても、申告書の審査は同じように行われます。申告書に間違いがあったときに、最初に税理士に連絡が来るか、納税者本人に連絡が来るか、という違いがあるだけです。税務調査も、税理士の有無によらず行われ、調査の結果は、税務職員から納税者本人にきちんと説明をするルールになっていますので、税理士に依頼していないからといって、いきなり税務処分が下されるようなことはありません。

それでは、どういう人が税理士に任せるべきなのでしょうか。

まずは、「相続税の申告の手間を最小限にしたい」という人でしょう。忙しくて自分で相続税について調べたり、申告書を作成したりする時間が取れない人は、税理士に依頼することで時間を節約することができます。たとえば、相続財産のなかに、評価計算の難しい不整形地があったり、取引相場のない非上場株式があったりした場合、自分だけで正しく計算することが難しく、時間もかかります。こうしたときは税理士に依頼するといいでしょう。

また、他の税金と違って、相続税は個人の感情が絡むという特徴があります。相続税の申告をスムーズに終えるために遺産分割を早く済ませようとしても、当事者の間で話がまとまらなければ先に進みません。そうした場合、第三者である税理士が入ることで、話がまとまりやすくなると考えられます。

相続税申告に新たな選択肢を

みなと相続コンシェルは、家族が必要なものだけを誠実に提供することをコンセプトにした会社です。AI相続を使えば完全無料で相続税申告書をセルフで作成できる。でも、同時に難しい部分だけの受注も引き受けていますし、税理士にすべて任せる場合も報酬を明瞭にしています。

サービスの中身を切り分けて、料金の内訳をユーザーに明らかにしているのは素晴らしいと思います。相続税の申告について、解決すべき問題は様々です。その問題には、自分だけで解決できるものもあれば、税理士に依頼すべきものあるでしょう。「時間にゆとりがあるので、AI相続を使って無料で申告したい」「不動産の評価計算だけは税理士に依頼したい」といった、それぞれの考えに沿ってサービスを利用できるのは、とてもいいことだと思います。

最後に、相続を迎えた家族へのメッセージをお願いします。

相続税は2015年1月1日以降、基礎控除額が引き下げられ、より多くの人に関係する税金になっています。いまや、相続税は誰もが基本的なルールを押さえておくべきものと言っていいでしょう。

その一方で、テクノロジーの進歩によって、相続税の申告はかつてより難しいものではなくなってきています。たとえば、以前は税務署の窓口でなければ調べられなかった路線価が国税庁ホームページで閲覧できるようになっていますし、パンフレットなども無料で公開されています。

さらに、自ら手計算するか、税理士に依頼するかの二択だった相続税申告に、「AI相続」という第3の選択肢が生まれたことで、よりよい環境ができたと思います。複数の選択肢を吟味し、それぞれのご家庭の実情に合わせて相続税の申告を進められるといいでしょう。みなさまの相続税の申告が、円滑に進むことを願っています。

小林さん、本日はありがとうございました。

いかがでしたでしょうか。
みなさまの疑問や不安が少しでも解けるきっかけとなれば幸いです。その他にもわからないことが
あれば、ぜひお気軽にご相談ください。

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小林 義崇(フリーライター・元国税専門官)

1981年、福岡県生まれ。西南学院大学商学部卒業。2004年に東京国税局の国税専門官として採用され、都内の税務署、東京国税局、東京国税不服審判所において、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務等に従事。 17年7月、東京国税局を退職し、フリーライターに転身。書籍や雑誌、ウェブメディアを中心とする精力的な執筆活動に加え、身近なお金に関するセミナーを行っている。著書に『確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!』(河出書房新社)『すみません、金利ってなんですか?』(サンマーク出版)がある。 HP:元国税ライター小林義崇のページ

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