相続専門コラム
「亡くなった親が信金やろうきんの口座を持っていた」
被相続人が信用金庫や組合の会員だと、手続きによって出資金の払い戻しを受けられることがあります。
本記事では出資金とは何か、相続の扱いと払い戻し手続きの方法、相続税評価について解説します。出資金の確認方法も案内するため、「家族が信金やろうきんを使用していたかも?」という人はぜひ参考にしてください。
目次
無料で使える 相続税申告書作成ソフト『AI相続』 なら、フォームに沿って入力するだけで簡単に申告書が完成!
複雑な計算もAI相続におまかせ。
さらに、土地評価など節税につながる部分だけを税理士に依頼することも可能です。

信用金庫や信用組合などの会員は死亡時に法定脱退扱いとなり、会員になるとき出資した持分=出資金が返還されます。
※法定脱退とは:
組合員の意思ではなく法的な根拠に基づき会員資格を失うこと

通常、信用金庫や信用組合を利用する際、「出資金」を支払い会員になることが求められます。
出資金は預貯金とは異なり、基本的にその団体を脱退するまで払い戻しされることはない持分です。団体によっては、出資金の額に応じて「配当金」が支払われることもあります。
<出資金が必要な金融機関・団体>

被相続人が信金やろうきんに預金口座を持っていたり、コープで宅配注文をしていたりすると、この出資金が残っていることがあります。たとえ預金残高がゼロでも、出資金だけ返還されることがあるため、必ず確認するようにしましょう。

ここでは、ろうきんを含む信用金庫や信用組合の相続手続きを解説します。
相続手続きをすると自動的に法定脱退扱いとなり、預金残高とあわせて出資金の払い戻しも受けられます。
コープの出資金やJAの相続手続きは別の記事で紹介しているため、そちらを参考にしてください。

被相続人の遺品から会員の有無を確認します。次のような遺品があれば、会員の可能性があります。
直近の通帳明細に「出資金」や「配当金」記載があると確実です。まずは通帳関連を確認してみてください。

取引内容がわかる資料を持参して各団体の窓口に行くか、電話で相続発生の旨を連絡します。
このとき、相続手続きと預金・出資金残高証明書の発行に必要な書類は何かを確認しましょう。残高証明書は相続税申告の際に役立つため、忘れないようにしてください。

必要書類をそろえて信用金庫・組合に提出します。同時に、先述した残高証明書の発行も依頼してください。
<主な必要書類(遺言なしの場合)>
| 必要書類 | 取得方法 |
|---|---|
| 金融機関所定の手続き用紙 | 店舗などの窓口で取得 |
| 残高証明書発行依頼書 | 店舗などの窓口で取得 |
| 相続人全員の印鑑証明書 (発行後6か月以内のもの) | 各相続人の住民登録がある市区町村の役場など |
| 相続人全員の戸籍謄本 または 法定相続情報一覧図 | ・戸籍謄本:各相続人の本籍地のある市区町村の役場など ・法定相続情報一覧図:法務局 |
| 被相続人の戸籍謄本 (生まれてから死亡するまで連続したもの) または 法定相続情報一覧図 | ・戸籍謄本:各相続人の本籍地のある市区町村の役場など ・法定相続情報一覧図:法務局 |
| (遺産分割協議による相続の場合) 遺産分割協議書 | ー |
手続きの際は、戸籍謄本に代えて提出できる「法定相続情報一覧図」を作成しておくと便利です。

被相続人の取引金融機関が多いと、相続手続きのたびに戸籍謄本の束を用意する手間がかかります。銀行に依頼すれば戸籍謄本の原本還付を受けられますが、手続きのたびに提出と還付を繰り返すのは思いのほか面倒な作業です。
手続きする金融機関が複数ある場合は、法定相続情報一覧図の作成を検討してください。
信用金庫・組合で必要書類の確認が終わったら、預金の残金が代表相続人の口座に振り込まれ、出資金も払い戻しされます。
ただし、法定脱退の処理は事業年度末(3月末が多い)に行われるケースがほとんどです。相続のタイミングによっては、手続きから払い戻しまでに1年ほどかかることもあるでしょう。その場合、相続人が出資金を受け取る前に相続税申告と納税が必要になる点に注意してください。
相続人が同じ信用金庫や組合の会員である場合、出資金の一部または全部の譲渡(名義変更)が認められることがあります。
名義変更の対応は団体によって異なるため、希望する際は問合せてみてください。なお、払い戻しをせず名義変更する場合でも、出資金は相続財産として扱います。

被相続人の信用金庫や信用組合の出資金は、相続税の課税対象です。

財産評価基本通達195の定めにより、相続税評価は「払込済の出資金額」によって行います。この評価方法は、払い戻しをせず名義変更(譲渡)した場合も同様です。
参考:国税庁「信用金庫等の出資金の相続税評価額」
「払込済の出資金額」は、相続手続きの際に「出資金残高証明書」を発行してもらえば確認できます。

ここでは、信用金庫や組合の出資金相続でよくある疑問をQ&A形式でまとめました。
A.少額とは限りません。
多くの信用金庫・組合で会員になるための最低出資額は数千円~1万円程度です。人によっては、「どうせ少ないし、手間をかけて払い戻しするほどではない」と思う人もいるでしょう。
しかし、住宅ローンなど融資のために会員になっている場合は、より多くの出資金を払っている可能性があります。また、信用金庫や組合によっては、出資金に年3~5%の配当金を出しています。
資産運用目的で多額の出資をしているケースも考えられるため、返還される出資金は必ずしも少額とは言えません。必ず手続きをして確認しましょう。
A.相続財産が基礎控除以上であれば、相続税申告・納税は必要です。

通常、法定脱退による出資金の払い戻しは事業年度の後になるため、受け取るまでに1年ほどかかるケースもあります。このように受取予定の相続財産が手元にない状態でも、「相続発生を知った日の翌日から10か月以内」という申告・納税期限は守らなければなりません。
なお、出資金を含めた相続財産が基礎控除額以下であれば、相続税はかからず、申告も不要です。
A.可能性はあります。
信用金庫・組合の組織ごとに持分出資の会員制度を設けています。複数の金庫・組合で預金口座(通帳)を持っているのであれば、出資金も複数存在する可能性があります。
A.法定脱退時より2年以内です。

法定脱退による出資持分の払戻し請求権は、脱退時より2年間権利を行使しなければ時効によって消滅します。
時効期限を過ぎると出資金の返還を受けられないため、相続発生後は速やかに手続きを進めてください。

出資金を相続税申告書に書く場合、使用する帳票は第11表「相続税がかかる財産の合計表」です。
【第11表の構成】
出資金は有価証券に該当するため、使用するのは第11表の付表2(有価証券用)とその合計を転記する合計表の2つです。
京都市在住。 金融代理店にて10年勤務したのち、2018年よりフリーライターとして独立。 金融・不動産・ビジネス領域の取材・執筆を中心に活動中。