相続専門コラム
相続手続きの最中に、被相続人の銀行口座に「年金生活者支援給付金」が振り込まれたら、相続財産になるのでしょうか?
結論を言うと、年金生活者支援給付金は相続財産に含まれず、相続税はかかりません。
本記事では、被相続人の死後に発生する「未支給の年金生活者支援給付金」の扱いや課税がどうなるのかを解説します。口座に振り込まれた給付金の扱いに困っている人はぜひ参考にしてください。
目次
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「年金生活者支援給付金」とは、一定の要件を満たす所得の年金受給者に支給される給付金です。2019年10月の消費税率引き上げによって開始した制度で、公的年金に上乗せする形で恒久的に支給されます。
この年金生活者支援給付金を受給していた人が亡くなると、基本的には以下のように扱います。
詳しく解説しましょう。
年金生活者支援給付金は、要件を満たす限り、受給対象者が亡くなるまで継続的に支給される制度です。基本的には、偶数月の中旬に前月分までの2か月分がまとめて振り込まれます。
そのため、死亡時のタイミングによっては、死後に未支給の年金生活者支援給付金が発生することがあります。
こうした未支給の給付金を受け取れるのは、亡くなった人の「遺族」です。年金生活者支援給付金の支給に関する法律では、遺族の範囲と優先順位を以下のとおり定めています(第9条)。
【給付金の請求権を持つ“遺族”の範囲と順位】

給付金の請求権を持つのは、死亡時に受給対象者(被相続人)と生計を同じくしていた以下の遺族です。
※自分より先順位者がいる場合は給付金を受け取れない
※同順位者が2名以上いる場合はそのうち1人が代表して請求することとする
なお、「生計を同じくしていた」=「同居」とは限りません。住民票上の住所が異なっていても、日常生活を共にしていたり、経済的な援助関係や定期的な音信訪問があったりすれば「生計を同じくしていた」と認められることがあります。
別居で給付金を請求する際は、生計を同じくしていたことがわかる書類の提出が必要です。詳細は日本年金機構の「生計同一関係証明書類等について」をご確認ください。

先述した年金生活者支援給付金の支給に関する法律では、年金生活者支援給付金へのあらゆる課税が禁止されています(第33条)。
本人の死後に遺族が給付金を受け取った場合でも、その金額を相続財産に含める必要はなく、相続税はかかりません。もちろん、所得税も非課税です。
ただし、未支給の年金を遺族が受け取る際は、一時所得の収入金額に該当することがあります(以下参考)。通常の公的年金と年金生活者支援給付金の課税は一部異なる点に留意してください。
参考:日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」より「4.提出の注意点等」
年金生活者支援給付金には約2年の請求期限があります。
年金生活者支援給付金の支給に関する法律では、年金生活者支援給付金の請求期限を以下のように定めています(第30条)。
年金生活者支援給付金の支給を受け、又はその返還を受ける権利及び次条第一項の規定による徴収金を徴収する権利は、これらを行使することができる時から二年を経過したときは、時効によって消滅する。
出典:年金生活者支援給付金の支給に関する法律
「行使することができる時」とは、給付金を請求できる状態になった時を指します。
【請求期限の例】
この場合、実際の給付金支給日が「権利を行使することができる時」です。ここから2年後が請求の時効となるため、期限を意識して早めに手続きをすませてください。

「そもそも、年金生活者支援給付金は誰が受け取れるの?」「対象かどうかもわからない」という人もいるでしょう。
年金生活者支援給付金は低所得者を支援するための制度で、すべての年金生活者が受給できるわけではありません。実際に受け取れる給付金の種類は以下の3つで、それぞれ対象者が異なります。

上記のほか、所得が一定以下であることが要件となります。詳細を見ていきましょう。
参考:厚生労働省「年金生活者支援給付金」、日本年金機構「年金生活者支援給付金」
老齢年金生活者支援給付金の支給要件・金額は以下のとおりです。なお、ここでの「所得」には、障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
| 老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金 | 概要 |
|---|---|
| 支給要件 | 以下の支給要件をすべて満たす人 ・65歳以上で老齢基礎年金の受給者 ・同一世帯の全員が市町村民税非課税 ・前年の所得の合計額が以下のとおり※ (昭和31年4月1日以前生まれ)90万6,700円以下 (昭和31年4月2日以後生まれ)90万9,000円以下 |
| 支給金額 | 月額5,450円を基準とし、以下の計算式によって算出する ・老齢年金生活者支援給付金: 次の(1)(2)の合計額 (1)保険料納付済期間に基づく額 (2)保険料免除期間に基づく額 ・老補足的齢年金生活者支援給付金: 保険料納付済期間に基づく額に調整支給率を乗じて得た金額 |
※昭和31年4月1日以前生まれで所得が80万6,700円超90万6,700円以下の人は「補足的老齢年金生活者支援給付金」が、昭和31年4月2日以後の生まれで80万9,000円超90万9,000円以下の人は「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
老齢年金生活者支援給付金の額は、月額5,450円を基準に保険料納付済期間等に応じて算出されます。
亡くなった人が65歳(昭和31年(1956年)4月2日以後の生まれ)で、「老齢年金生活者支援給付金」の対象になる場合の支給額は以下のとおりです。
【納付済月数が240カ月、全額免除月数が60カ月の場合】
なお、給付額は毎年度、物価の変動による改定(物価スライド改定)があります。毎年固定の額になるわけではありません。
障害年金生活者支援給付金の支給要件・金額は以下のとおりです。ここでの「所得」には、障害年金等の非課税収入は含まれません。
| 障害者年金生活者支援給付金 | 概要 |
|---|---|
| 支給要件 | 以下の支給要件をすべて満たす人 ・障害基礎年金の受給者 ・前年の所得が「479万4,000円+扶養親族の数 × 38万円※」以下 |
| 支給金額 | ・障害等級1級: 6,813円(月額) ・障害等級2級: 5,450円(月額) |
※ 同一生計配偶者のうち70歳以上の者または老人扶養親族の場合は48万円、特定扶養親族または16歳以上19歳未満の扶養親族の場合は63万円となる
障害者年金生活者支援給付金は等級によって金額が決まっており、2級は月額5,450円・1級は月額6,813円です。
遺族年金生活者支援給付金の支給要件・金額は以下のとおりです。ここでの「所得」には、障害年金等の非課税収入は含まれません。
| 遺族年金生活者支援給付金 | 概要 |
|---|---|
| 支給要件 | 以下の支給要件をすべて満たす人 ・遺族基礎年金の受給者 ・前年の所得が「479万4,000円+扶養親族の数×38万円※」以下 |
| 支給金額 | ・5,450円(月額) |
※ 同一生計配偶者のうち70歳以上の者または老人扶養親族の場合は48万円、特定扶養親族または16歳以上19歳未満の扶養親族の場合は63万円となる
遺族年金生活者支援給付金の金額は固定で、一律で月額5,450円となります。

未支給の年金生活者支援給付金がある場合、未支給の年金とあわせて請求できます。
まずは、以下の添付書類を用意し、「死亡」および「未支給年金請求」の届出をしてください。届出の様式はこちらで入手可能です。
| 届出の種類 | 必要書類 |
|---|---|
| 死亡の届出 | ・亡くなった人の年金証書 ・死亡の事実がわかる書類 ∟住民票除籍 ∟戸籍抄本 ∟死亡診断書のコピー など |
| 未支給年金請求の届出 | ・亡くなった人の年金証書 ・亡くなった人と請求者(遺族)の続柄を確認できる書類 ∟戸籍謄本または法定相続情報一覧図の写し等 ・生計を同じくしていたことがわかる書類 ∟亡くなった人の住民票の除票および請求する方の世帯全員の住民票の写し ・受け取りを希望する金融機関の通帳 亡くなった方と請求する方が別世帯の場合は「生計同一関係に関する申立書 |
マイナンバーの記入状況や請求者の続柄によっては、一部必要書類の省略が可能です。詳細は、提出先である年金事務所または街角の年金相談センターにお尋ねください。
なお、亡くなった人が日本年金機構にマイナンバーを収録している場合、死亡の届出は省略できます。

年金生活者支援給付金の受給者が亡くなった際のよくある疑問をQ&A形式で解説します。
年金生活者支援給付金は公的年金と同様、2か月に1度の給付(年6回給付)となります。

※15日が土日祝日の際は、直前の平日に振り込まれる
公的年金と同じ口座、同じ支給日に、年金とは別で振り込まれます。
【支給スケジュール】
支給済の年金生活者支援給付金や公的年金は、被相続人の預貯金として扱います。預貯金は相続財産に含まれるため、他の遺産と同様、相続および相続税の対象となります。
【偶数月に亡くなった場合】
この場合、9月分までは支給されているため、亡くなった10月分の給付金については遺族が請求可能です。
【奇数月に亡くなった場合】
この場合は、6月分・7月分の給付金を遺族が請求可能です。このように、亡くなった時期と支給日のタイミングにより、請求できる給付金の額は異なります。
年金生活者支援給付金の受給には「各種公的年金を受けている」ことが要件となります。本人が死亡してしまった後に受給認定を受けることはできず、遺族が認定前の給付金を受け取ることもできません。
| 年金の種類 | 相続の扱い |
|---|---|
| 未支給の公的年金・年金生活者支援給付金 | ・受け取れる人:遺族が請求権をもつ ・税金: 未支給の公的年金→所得税の対象 未支給の年金生活者支援給付金→相続税も所得税も非課税 |
| 私的年金(iDeCo、企業型DC、DBなど)の死亡一時金 | ・受け取れる人:遺族が請求権をもつ ・税金:みなし相続財産として相続税の対象 |
| 民間の個人年金保険 | ・受け取れる人:指定された保険金受取人 ・税金:みなし相続財産として相続税または贈与税の対象 |
未支給の公的年金・年金生活者支援給付金は、いずれも相続税の課税対象になりません。ただし、公的年金については遺族の一時所得として所得税の対象になる可能性があります。所得税の扱いのみ異なる点は注意が必要です。
なお、これらの年金は自動給付ではなく、所定の手続きをしなければ受け取れません。相続発生後は手続きを忘れないようにご注意ください。
京都市在住。 金融代理店にて10年勤務したのち、2018年よりフリーライターとして独立。 金融・不動産・ビジネス領域の取材・執筆を中心に活動中。
監査法人トーマツ、独立系コンサルティング会社で業務の経験を積み、2013年に相続税専門税理士として独立。相続において大切なことを伝えるべく「笑って、学んで、健康に」をモットーに、社会人落語家「参遊亭英遊」としても活躍。高座に上がる回数は年間80回超。著書に『知識ゼロでもわかるように 相続についてざっくり教えてください』(総合法令出版)がある。 HP:埼玉・大宮あんしん相続税相談室