相続専門コラム
公的介護サービスを受けていた親が亡くなると、介護保険料や後期高齢者医療保険料の未納や払いすぎを知らせる通知が届くことがありますが、実はこのように故人が納めていた社会保険料を支払う義務と、還付を受ける権利は遺族に引き継がれる事になります。
この記事では、故人の介護保険料・後期高齢者医療保険料の精算方法と相続税の関係、還付手続きのポイントを解説します。ぜひご参照ください。
目次
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介護保険料や後期高齢者医療保険料を納めていた人が亡くなると、保険料の不足や過払いの精算が必要になることがあります。
まずは、相続発生時の基本的な扱いを解説します。

原則として、公的医療保険や介護保険、年金保険などの社会保険料は日割り計算できません。
そのため、介護保険料や後期高齢者医療保険料の被保険者が亡くなると、死亡日の翌日(資格喪失日)が属する月の前月末までの保険料を負担する必要があります。つまり、月割り精算です。
【介護保険料などを払っていた人が亡くなった際の例】
上記の場合、10月の前月である9月末分までの介護保険料・後期高齢者医療保険料を負担しなければなりません。なお、月末の10月31日に亡くなると、11月1日が資格喪失日です。この場合は、11月の前月である10月末分までの保険料負担が必要です。

介護保険料や後期高齢者医療保険料の不足が生じた場合、それを支払う義務は相続人に引き継がれます。
特に不足が生じやすいのは、介護保険料や後期高齢者医療保険料を普通徴収(口座納付書払い・または口座振替)にしているケースです。本人が入院中で納付書の支払いができていなかったり、口座の残高不足で口座振替ができなかったりして、保険料の未納(不足)が発生します。
したがって、亡くなった人宛に保険料未納の通知がきたら、相続人が支払わなければなりません。
一方で、亡くなったタイミングによっては保険料を払いすぎになっていることがあります。このように「払いすぎた保険料」を受ける権利もまた、相続人に引き継がれます。
払いすぎになりやすいのは、以下のように保険料を特別徴収(年金天引き)にしているケースです。
【過払いが発生しやすい事例】
上記の場合、納めるべき介護保険料・後期高齢者医療保険料は5月末までです。しかし、死亡後すぐに保険料徴収日がくると、自動的に6・7月相当の保険料が天引きされるため、過払いが生じてしまいます。
過払いは自動的に振り込まれるわけではないため、相続人が還付請求手続きを行う必要があります。

介護保険料・後期高齢者医療保険料の未納分を納めたり、過払いの結果生じた還付金を受け取ったりすると、相続税の計算が変わります。
【未納】
亡くなった人の代わりに納めた未納保険料を相続財産から債務控除できる※
【過払い】
過払いにより受け取った保険料は相続財産に含まれる
※未納保険料で債務控除できるのは、死亡日時点ですでに支払いが確定していた分に限る
基本的に、65歳以上の介護保険料と、75歳以上の人が加入する後期高齢者医療保険料の支払いは「特別徴収」と呼ばれる年金払いです。特別徴収の場合、2か月に1度支給される年金から2か月分の保険料が天引きされるため、過不足が生じやすくなります。
65歳以上の人が亡くなった場合は、保険料の過不足に伴う支払いや還付がないかをよく確認しましょう。

介護保険料を払っていた人が「65歳以上」または「64歳以下で要支援・要介護認定を受けていた」場合は、亡くなった際に以下の手続きが必要です。

【手続きの流れ】
※40歳以上64歳以下で要支援・要介護認定を受けていない人が亡くなった際は手続き不要
死亡届の提出先は、故人の住民票がある自治体です。
【死亡届提出時の主な必要書類】※自治体により異なります
先述のとおり、還付額と不足額は相続税申告時の計算に影響します。受け取った還付金は相続財産に含め、支払った不足額は相続財産から控除して計算するようにしてください。
なお、死亡時に介護施設に入居していたが自宅をお持ちの場合、要件を満たせば小規模宅地等の特例を適用できます。特例適用の際は介護保険証のコピーが必要になるため、保険証の返却前にコピーだけ取っておくと良いでしょう。

後期高齢者医療保険料を払っていた人(原則75歳以上または65歳以上で一定の障害がある人)が亡くなった場合、以下の手続きが必要です。あわせて、葬祭費の支給申請もしておくとスムーズです。

【手続きの流れ】
「葬祭費」は、後期高齢者医療保険制度の被保険者が亡くなった際、葬儀を執り行った人(喪主や遺族)に支給される給付金です。葬祭費は非課税のため、相続財産に加える必要はありません。
【死亡届提出時の主な必要書類】※自治体により異なります
【葬祭費支給申請時の主な必要書類】
後期高齢者医療保険料の葬祭費は5万円前後で支給されるのが一般的です。金額や詳しい手続きの流れは自治体によって異なるため、故人の住民票がある自治体で詳細を確認してください。

ここでは、介護保険料・後期高齢者医療保険料に関するよくある質問をQ&A形式で解説します。
介護保険や後期高齢者医療は、多くの場合、被保険者の死亡届を出せば自動的に資格喪失の処理が行われます。しかし、自治体によっては、死亡届とは別に資格喪失届の提出が必要な場合もあります。
また、資格喪失の処理が自動的に行われている場合でも、保険証などの返却は別途必要です。
【介護保険証のコピーが必要になるケース】
上記のように、被相続人が介護サービスを利用していた場合、相続税申告や介護費用の精算などで介護保険証のコピーが必要になることがあります。
死亡後も介護保険証が必要になる手続きは少なくないため、返却する際に複数枚コピーを取っておくと安心です。
亡くなった人の介護保険料や後期高齢者医療保険料の還付金がある場合、還付を受けられる権利は2年で消滅します。いつでも還付請求できるわけではありません。
還付金があると判明したら、速やかに手続きをするようにしてください。

介護保険料・後期高齢者医療保険料の還付金を含めた遺産が基礎控除額を超える場合は、相続税申告・納税が必要です。
このとき使う相続税申告書は、第11表の付表4と合計表です。
【相続税申告書 第11表の構成】
まず、付表4の財産の明細に「未収入金」として還付金の内容を記入します。「財産の名称等」の箇所に「〇〇市 介護保険料・後期高齢者医療保険料還付金」と書き、還付された金額を入れてください。
付表4ができたら、その内容を第11表の合計表に転記します。第11表の詳細はこちらでも解説しているため、あわせて確認するようにしてください。
京都市在住。 金融代理店にて10年勤務したのち、2018年よりフリーライターとして独立。 金融・不動産・ビジネス領域の取材・執筆を中心に活動中。