相続専門コラム

【自分で相続税申告】第10表(退職手当金などの明細書)の書き方と注意点を徹底解説!

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特別な資格はなくても、相続税の申告書を自分で書くことは可能です。というのも、相続税申告書には決められた書き方があるため財産が正確に把握できていて決められた記載方法に則れば問題なく作成出来るからです。

第10表は「退職手当金などの明細書」という記載ですが、この中には小規模企業や弔慰金も含まれており記載する必要があります。今回は被相続人の死亡退職金を相続・遺贈した場合に使用する、相続税申告書「第10表」の書き方と注意点を解説していきます。

相続税申告書の種類と書き順のおさらい

一般的な相続税申告の場合、申告書を書く手順は以下のとおりです。

第9表~第15表を作成:
生命保険金や現金、不動産などの相続財産の内容や被相続人の債務を書く

第1表・第2表を作成:
第9表~第15表で書いた表を元に、課税価格の合計額と相続税の総額を計算して書く

第4表~第8表を作成:
受けられる税額控除がある場合には税額控除の種類ごとに計算し、第1表に税額控除額を転記して「誰がいくら納税するのか」を算定する

相続税の申告書様式の一覧(令和5年分)はこちらをご覧ください

申告書の種類は第1表から第15表までありますが、すべての帳票を使用するわけではありません。使用する申告書は相続財産や債務、適用する控除等によって異なります。

その他帳表の記載方法はこちら
- 第1表 -
相続税の申告書
- 第2表 -
相続税の総額の計算書
- 第4表 -
相続税額の加算金額の計算書(2割加算)
- 第4表の2 -
暦年課税分の贈与税額控除額の計算書
- 第5表 -
配偶者の税額軽減額の計算書
- 第6表 -
未成年者控除額の計算書
- 第6表 -
障害者控除額の計算書
- 第7表 -
相次相続控除額の計算書
- 第8表 -
外国税額控除額の計算書
- 第8の8表 -
税額控除額および納税猶予税額の内訳書
- 第9表 -
生命保険金などの明細書
- 第10表 -
退職手当金などの明細書
- 第11・11の2表の付表1 -
小規模宅地等の特例
- 第11の2表 -
相続時精算課税適用財産などの明細書
- 第11表 -
相続税がかかる財産の合計表
- 第13,14,15表 -
各表の記載方法まとめ

第10表が必要になる人

相続税申告で第10表(退職手当金などの明細書)が必要になるのは、被相続人の死亡によって退職手当金・功労金・退職給付金などを相続・遺贈で取得し、かつ、相続税が発生する人です。

死亡退職金とは

被相続人の死亡によって、被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与(これらを「退職手当金等」といいます)を受け取る場合で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続または遺贈により取得したものとみなされて、相続税の課税対象となります。

参考:国税庁「相続財産とみなされる退職手当金等」

死亡退職金が非課税枠内なら相続税はかからないが……

死亡退職金には非課税枠があります。

すべての相続人が受け取った退職金の合計額が非課税限度額以下であれば、相続税は課税されません。この非課税枠を使ううえで相続税申告という要件はないため、申告をしなくても非課税の恩恵を受けることは可能です。

よって、死亡退職金の合計額が非課税枠以内で、他の相続財産を加算しても遺産総額が基礎控除額以下であれば、相続税は発生しないため相続税申告は不要です。

とはいえ、相続財産の評価額や非課税限度額の計算に間違いがあれば、相続税申告の要否を正しく判断できません。死亡退職金の非課税枠や評価方法については、こちらの解説記事もご確認ください。

「弔慰金」という名目でも死亡退職金とみなされることがある

会社が従業員の遺族に支払う「弔慰金」は遺族に対する弔意を示すものです。よって、退職金とは性質が異なります。社会通念上相当額の弔慰金であれば、相続税の対象になることはありません。

しかし、弔慰金という名目でも、社会通念上相当額を超えるような金額であれば、超えた部分は実質的な死亡退職金とみなされ、相続税の課税対象になります。

弔慰金が死亡退職金とみなされる金額の基準は、以下のとおりです。

被相続人の死亡が業務上の死亡である場合
被相続人の死亡当時の普通給与の3年分に相当する額

被相続人の死亡が業務上の死亡でない場合
被相続人の死亡当時の普通給与の半年分に相当する額

※「普通給与」とは賞与以外の俸給、給料、賃金、扶養手当、勤務地手当、特殊勤務地手当等の合計額をいう

参考:国税庁「No.4120 弔慰金を受け取ったときの取扱い」

受け取った金品が弔慰金になるのか、それとも死亡退職金扱いになるのか判断に迷ったときは、税務署や税理士に相談してください。

第10表の書き方と記載例

ここからは、実際の様式を元に第10表(退職手当金などの明細書)の書き方と記載例を解説していきます。2024年6月時点で最新の帳票は、右上に「平成21年4月分以降用」と記載があるこちらの帳票です。

第10表を書く際は、死亡退職金の明細が必要です。被相続人宛の退職金支給通知書など、受取金額や支給日がわかる書類をあらかじめ用意しておきましょう。

1.相続や遺贈によって取得したものとみなされる退職手当金など

※記載例です。記載例の計算と申告書作成はAI相続で行っています。

申告書の上部には、死亡退職金とみなされる金品の詳細を書いていきます。該当する退職金や受取人が複数におよぶ場合は、複数行に分けて詳細を記載してください。

① 勤務先会社等の所在地

被相続人に退職金等を支給した勤務先会社の所在地を書きます。都道府県名から書く必要はなく、東京都であれば特別区以降、それ以外の地域は市区町村以降の住所でかまいません。

② 勤務先会社等の名称

被相続人に退職金等を支給した勤務先会社の名称を書きます。被相続人が個人事業主や自営業者で、小規模企業共済などの団体から死亡退職金を受け取った場合は、支給団体の名称を書いてください。

③ 受取年月日

退職金等を受け取った年月日を書きます。通帳の明細や支給通知書などで正しい支給年月日を確認し、記載してください。

④ 退職手当金などの名称

支給時の名称を書きます。たとえ名目が功労金や弔慰金であっても、実質退職金とみなされる金品があれば、すべて記載しなければなりません。

⑤ 受取金額

受け取った退職金等の金額を書きます。なお、受け取った弔慰金のうち一部が死亡退職金とみなされる場合には、みなし相続財産部分の金額を記載します。

⑥ 受取人の氏名

退職金等を相続や遺贈で取得した人の名前を書きます。相続人以外の人も含め、被相続人の死亡によって退職金等を取得した人の名前はすべて記載してください。

2.課税される金額の計算

申告書の下部には、退職金等を受け取った相続人について記載し、非課税額と課税金額を算出していきます。なお、相続を放棄した人や元々相続権がない人・相続権を失った人は非課税枠を適用できません。

退職手当金などの非課税限度額

死亡退職金の非課税限度額を計算します。

非課税限度額は【500万円×法定相続人の数】です。たとえば法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人の場合、死亡退職金の非課税限度額は500万円×3人=1,500万円です。

法定相続人の数え方は、相続税の基礎控除計算と同じ数え方です。相続放棄をした人や代襲相続をした人、養子も一定人数までであれば、法定相続人の頭数に含めることができます。

退職手当金などを受け取った相続人の氏名

退職金等を受け取った相続人、つまり非課税枠の適用を受けられる人の氏名を書きます。

相続を放棄した人は法定相続人の頭数計算に含めることができるものの、相続人にはなれません。よって、上述した「法定相続人の数」と、ここで記載する相続人の数は必ずしも一致しない点に留意してください。

① 受け取った退職手当金などの金額

相続人が受け取った退職金等の金額を書きます。複数の退職金等を受け取っている場合には、受け取った相続人ごとの合計額を記載します。

② 非課税金額

先ほど算出した非課税限度額を元に、各相続人の非課税金額を算出します。

非課税限度額A × 各相続人の退職金等合計額(①9/すべての相続人が受け取った退職金等の合計額(B) =この相続人が受けられる非課税金額(※ここは図にして表示したいです)

具体的な計算例は、後述する「第10表 死亡退職金の課税金額計算例」にて紹介しています。

③ 課税金額

各相続人が受け取った退職金等の合計額①から、②非課税金額を差し引き、課税金額を求めます。受け取った退職金等の合計額①が②非課税金額以下であれば、課税金額は0円となり、相続税は発生しません。

④ 合計

各相続人の課税金額を合計して書きます。

第10表 死亡退職金の課税金額計算例

ここでは、死亡退職金の課税金額計算例を紹介します。被相続人である父親が亡くなり、その死亡によって取得した退職金等を配偶者と子どもたちが受け取った場合の計算例を見てみましょう。

  • 法定相続人:配偶者、長女、次女の計3人
  • 被相続人の死亡退職金等の合計額:2,000万円
  • 各自の受取額:配偶者1,000万円 長女500万円 次女500万円

1.非課税限度額を計算する

上記の場合、非課税限度額は500万円 × 3人=1,500万円です。

各相続人の取得した退職手当金等の合計額が非課税限度額以下であれば、相続税が課されることはありません。しかし、今回のように受取額(2,000万円)が非課税限度額(1,500万円)を上回る場合、超えた金額の500万円に対して課税されます。そのため、この500万円の課税部分を各相続人に振り分けなければなりません。

そこで、非課税限度額1,500万円を各相続人で按分し、それぞれの非課税金額と課税額を計算します。

2.非課税限度額を各相続人に振り分ける

1で求めた非課税限度額1,500万円を、各相続人の受取額に応じて振り分けます。

  • 配偶者の非課税金額:1,500万円 × (1,000万円÷2,000万円)=750万円
  • 長女の非課税金額:1,500万円 × (500万円÷2,000万円)=375万円
  • 次女の非課税金額:1,500万円 × (500万円÷2,000万円)=375万円

3.各相続人の課税額を計算する

各相続人が受け取った死亡退職金から、2で求めた各相続人の非課税金額を差し引きます。

  • 配偶者の課税額:1,000万円 – 750万円 = 250万円
  • 長女の課税額:500万円 – 375万円 = 125万円
  • 次女の課税額:500万円 – 375万円 = 125万円

以上が、各相続人の死亡退職金の課税対象額です。このあと、預貯金や不動産、有価証券といった他の相続財産と合計し、最終的な相続税額を計算します。

第10表の注意点

相続税申告で第10表を使用する際の注意点は、以下の3つです。

「500万円×法定相続人分」をそのまま非課税にできるわけではない

死亡退職金には「500万円×法定相続人分」の非課税枠(非課税限度額)があります。

各相続人の取得した退職手当金等の合計額が非課税限度額を超える場合は、この非課税限度額を相続人の数に応じて按分しなければなりません。「500万円×法定相続人分」で計算した非課税枠をそのまま差し引けるわけではないのでご注意ください。

※死亡退職金の非課税限度の計算は、生命保険金の非課税限度額の計算と同じです。生命保険などの明細書についての書き方は、こちらをご覧ください。

死亡退職金の非課税枠を使えるのは相続人のみ

死亡退職金の非課税枠を適用できるのは相続人だけです。

死亡退職金は受取人固有の財産になるため相続人以外でも取得できますが、相続を放棄した人、相続の権利がない人は非課税枠を使えません。そのため、受け取った退職金等の金額すべてが課税対象になります。

非課税枠の計算には相続放棄した人も頭数に入れてOK

死亡退職金における非課税枠における「法定相続人」の計算ルールは、相続税の基礎控除額や死亡保険金の非課税枠計算ルールと同様です。具体的には、以下のルールで法定相続人を数えます。

  • 相続放棄をした人も法定相続人の数に含める
  • 代襲相続をした人も法定相続人の数に含める
  • 養子を法定相続人の数に含める場合、他に実子がいなければ2人まで、実子がいる場合は1人まで含めることができる

たとえば、法定相続人が3人で、退職金等を受け取った相続人が3人いたとします。そのうち1人が相続を放棄している場合、相続を放棄した人は非課税枠の適用を受けられません。

生命保険金の非課税枠と死亡退職金の非課税枠は併用できる

生命保険金(死亡保険金)ち死亡退職金はいずれもみなし相続財産で、非課税枠の計算方法も同じです。「生命保険金の受け取りで非課税枠を使ってしまったから、死亡退職金の非課税枠は使えないの?」と思う人もいるでしょう。しかし、生命保険金の非課税枠と死亡退職金の非課税枠は別枠です。相続で生命保険金と死亡退職金を受け取った場合には、それぞれの非課税枠を併用できるので安心してください。

その他帳表の記載方法はこちら第1表-相続税の申告書第2表-相続税の総額の計算書第4表-相続税額の加算金額の計算書(2割加算)第4表の2-暦年課税分の贈与税額控除額の計算書第5表-配偶者の税額軽減額の計算書第6表-未成年者控除額の計算書第6表-障害者控除額の計算書第7表-相次相続控除額の計算書第8表-外国税額控除額の計算書第8の8表-税額控除額および納税猶予税額の内訳書第9表-生命保険金などの明細書第10表-退職手当金などの明細書第11・11の2表の付表1-小規模宅地等の特例第11の2表-相続時精算課税適用財産などの明細書第11表-相続税がかかる財産の合計表第13,14,15表の記載方法まとめ

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