相続専門コラム

ペットに財産を残す方法は5つ|動物のための相続対策を解説

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ペットはかけがえのない我が子のような存在です。

「自分に万が一のことがあったらこの子はどうなるのか」と不安になり、ペットのために財産を残したいと思う人もいるでしょう。

結論から言うと、日本の法律ではペット(動物)に直接財産を相続させることはできません。しかし、信頼できる人や団体に財産を託し、ペットのお世話を任せる方法であれば可能です。

本記事では、飼い主が亡くなった後もペットが安心して暮らすための生前対策を解説します。相続税の扱いやよくある質問も解説しているため、ペットへの相続を考えている人はぜひ参考にしてください。

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ペットに財産を相続できない理由

ペット(動物)に直接財産を相続させることはできません。

民法では、相続人になれるのは配偶者・子ども・直系尊属や兄弟姉妹といった「人間」に限られており、ペットは「動産」として扱われます。そのため、遺言書で「ペット(動物)を相続人にする」「ペットに財産を残す」と指定しても無効になります。

では、大切なペットのためにできる相続対策はないのでしょうか。

実は、生前に信頼できる人や団体にペットの世話を託し、その対価として財産を残す方法であれば可能です。次章では、自分が亡くなった後もペットが安心して暮らせ環境を整えたい人のために、間接的に財産を残す仕組みを解説します。

ペットのために財産を残す相続対策は5つ

自分の死後、ペットの生活を守るために財産を残す方法は主に5つあります。

生前対策の種類特徴監視機能
の有無
向いているケース
負担付遺贈・遺言書で一方的に指定できる
・拒否される可能性がある

限定的
確実性が低いため、信頼できる身内がいる場合のみ
負担付死因贈与契約・生前に結ぶ贈与契約
・飼育放棄の可能性は否定できない

限定的
・生前に飼育を引き受けてくれる人が決まっている場合
死後事務委任契約・生前に結ぶ委任契約
・専門家に依頼できる
・他の方法と組み合わせた活用が◎
×
無い
・頼れる親族・友人がいない場合
・飼育だけではなく死後の諸手続き全般も任せたい
ペット信託・生前に結ぶ信託契約
・財産管理の透明性が高い
・柔軟な契約が可能

長期にわたる
監視体制あり
・財産が多く管理が不可欠
・ペット飼育・財産管理ともに確実性が高い方法を希望している
ペット後見・生前に依頼する民間の後見サービス
・緊急時の保護、終生飼育を託せる

組織的運営による相互監視
・個人より団体に依頼したい
・飼育経験豊富な施設に終生飼育を託したい

「監視機能」とは、ペットの飼育や財産管理をチェックする機能を差します。負担付遺贈と負担付死因贈与契約の場合、弁護士などの専門家を遺言執行者にしておけば、ペットが良好な飼育環境にあることを確認したうえで財産を移転できます。ただし、遺言執行者の役割は財産移転によって終了するため、長期的に飼育環境をチェックする体制はありません。

死後事務委任契約も同様で、基本的には受任者が事務手続きを完了すると契約は終了します。

長期に及ぶ監視機能を重視する人は、信託監督人という“第三者の監視者”を設置できるペット信託が適しています。また、施設として終生飼育を保証するペット後見も、組織的な運営による相互監視が期待できるでしょう。

その1.負担付遺贈

負担付遺贈とは、自分の死後に財産を譲り渡す代わりに、ある条件(義務)を果たしてもらう約束付きの遺言です。ペットのために活用する際は、生前の飼い主(遺贈者)が飼育を遺贈の条件とし、信頼できる家族や友人を受遺者として遺言書で指定します。

【利用の流れ】

  • 飼い主(遺贈者)が遺言書で「私の飼っている犬の生涯にわたる飼育を条件として、Aさん(受遺者)に私の財産500万円を遺贈する」と指定する

負担付遺贈は遺言による一方的な意思表示ができ、相手からの同意がなくても指定できるのが特徴です。ただし、自分の死後、指定した受遺者から財産の受け取りを放棄される可能性があります。負担付遺贈を拒否した受遺者は財産を受け取れませんが、ペットの飼育を拒否できます。

このとき他の相続人もペットの飼育を拒否すると、誰も引き取り手がいない、という事態になりかねません。できる限り信頼できる人を受遺者に選び、生前にきちんと話して承諾を得ておく必要があります。なお、遺言書の形式は公正証書遺言にしておくと確実です。

その2.負担付死因贈与契約

負担付死因贈与契約とは、自分の死後に財産を譲り渡す代わりに、財産を受け取る人に一定の負担(義務)を課す贈与契約です。ペットのために活用する際は、財産を渡す飼い主(贈与者)と受け取る人(受贈者)の双方が生前に飼育の条件などを話し合い、合意したうえで契約を結びます。

【利用の流れ】

  • 生前に飼い主(贈与者)と受贈者との間で話し合い、合意した内容で負担付死因贈与契約を結んでおく

負担付死因贈与契約はペットの飼育を任せる人が決まっている際に使いやすい方法です。飼育を任せる人を受贈者として契約を結び、契約書は公正証書にしておきましょう。

ただし、財産を受け取った受贈者が約束された負担(義務)を全く履行せず、飼育放棄してしまう可能性は否定できません。生前、他の相続人に契約内容と事情を話しておき、「飼育放棄の際は契約を解除して贈与を実行しない」「その際は誰がペットを飼育するのか決めておく」などの根回しが必要です。

負担付遺贈と同様に第三者のチェック機能がないため、信頼できる人がいる場合に有効な方法と言えます。

その3.死後事務委任契約

死後事務委任契約とは、自分が亡くなった後の事務手続き全般をあらかじめ委任しておく契約です。自分の死後にペットの飼育を含む事務手続きを依頼したい委託者と、依頼される受託者の合意により、生前に契約を結びます。

【利用の流れ】

  • ペットのための死後事務委任契約に対応している専門家(弁護士や司法書士など)や団体を探すか、信頼できる人に委任を相談して契約する

死後事務委任契約の特徴は、自分の葬儀の手配や遺品整理、新しい飼い主探しといった諸手続きも任せられる点にあります。「身寄りがいないため、葬儀や遺品整理なども依頼したい」人は、死後事務委任契約に対応している専門家や団体を探してみるとよいでしょう。

ただし、死後事務委任契約はペットの飼育そのものより、死後の諸手続き全般の履行をメインとする契約です。ペットの飼育については、動物愛護団体など特定施設への引き渡し手続きを条項に入れておく、後述するペット後見も活用するなど、複数の方法を組み合わせることをおすすめします。

その4.信託契約(ペット信託)

信託契約は、信頼できる人や団体と契約を結び、信託目的にしたがって財産の管理や処分・運用を託す方法です。ペットのための信託契約は「ペット信託」とも呼ばれ、飼い主があらかじめ信頼できる人(受託者)に資金を託し、そのお金を使って第三者にペットの飼育を続けてもらう仕組みです。

※「ペット信託」は協同組合親愛トラストの登録商標およびサービスです

  • 委託者:財産を託す飼い主
  • 受託者:財産の管理をする人
  • 受益者:受託者から飼育に必要な費用を受け取り、ペットのお世話をする人・団体
  • 信託監督人:信託契約の内容が適切に守られているかチェックする人

【利用の流れ】

  • ペットのための信託契約に対応している専門家(弁護士や司法書士など)や団体を探し、信託契約を結ぶ

ペット信託の特徴は、財産を託す人と飼育する人を別々に指定できる点にあります。受託者は契約で定められた範囲の費用のみを飼育者に支払うため、信託財産がペット以外のことで不正に使われるリスクに対処できます。

契約の際、希望すれば監視役として「信託監督人」の設置も可能です。設置すればペットの飼育が適切に行われているのかをチェックできるため、より確実性を求める人に適しています。ペット信託は柔軟かつ確実性の高い対応が魅力ですが、契約時にはある程度まとまった費用がかかる点には留意が必要です。

その5.ペット後見

ペット後見とは、ペットを有償で譲り受けて飼養する「譲受飼養業」の団体・業者が提供する民間サービスです。単に財産を遺すものではなく、飼い主の病気療養や死亡に備えて、ペットを引き取る仕組みを包括的に整えている点が特徴です。

【利用の流れ】

  • ペット後見サービスに対応している団体・業者を探して契約を結ぶ

サービス内容は業者によって異なりますが、一般的なペット後見の内容は次のとおりです。

  • 飼い主の緊急時(入院や要介護状態、危篤状態など)に駆けつけてペットを緊急保護
  • 保護したペットの終生飼育、または新しい飼い主を探して引き渡す
  • 飼育費用の残し方を選べる(負担付遺贈、信託生命保険などから選択)

ペット後見の特徴は、経験豊富な団体や施設に「緊急時の保護」や「終生飼育」を託せる安心感にあります。ただし、あくまで民間サービスのため、利用する業者によって内容は異なります。飼育費用の残し方や飼育方法の詳細など、事前のサービス内容確認が不可欠です。

誰にペットと財産を託す?候補例

ペットを託す相手は家族に限りません。複数の選択肢があるため、ご紹介した方法にあわせて託す相手を検討してください。

信頼できる個人

  • 家族・親族・ペット仲間・友人などで信頼できる個人

専門家や団体、業者】

  • 弁護士や司法書士などの専門家
  • 老犬・老猫ホーム(譲受飼養業を営む施設)
  • 動物保護活動を行う団体やNPO法人

身近に信頼できる個人がいる場合は、負担付死因贈与契約やペット信託の形式を利用して財産を残す方法がおすすめです。特に財産が大きい人は徹底した管理と飼育放棄の懸念を排除することが可能な第三者のチェック機能があるペット信託を選ぶと安心です。

身寄りがいない人や「専門機関に任せたい」という人は、死後事務委任契約やペット後見がおすすめです。死後の事務手続きが必要であれば死後事務委任契約、終生飼育を希望する人はペット後見を検討しましょう。

相続税の取扱いはどうなる?

飼い主のペットと財産はどちらも相続税の対象です。それぞれの扱いを見ていきましょう。

ペットにかかる相続税

ペットは相続財産において「動産」として扱われ、遺産分割および相続税の課税対象です。財産評価基本通達134では、ペットを含む動物について「売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価」すると定めています。これは簡単に言い換えると、“売却するならいくらの買取見積額がつくのか”で評価額が決まるということです。実際には買取見積額が付くケースは少なく、評価額はゼロとなるのが一般的です。

ただし、魚や珍しい虫、両生類など、売却可能なペットで希少価値の高い動物だと、買取見積額がつくこともあります。この場合は税務署に確認のうえ、相続税申告に加算してください。

財産にかかる相続税

ペットのために財産を残す場合、方法によって税金の扱いが異なります。

財産を残す方法税金の扱い
負担付遺贈死後に受け取った財産に相続税がかかる
負担付死因贈与契約死後に受け取った財産に相続税がかかる
死後事務委任契約報酬の前払金のうち、実費以外の費用に所得税がかかる
ペット信託受益者(死後に飼育する人)が受け取った費用に贈与税または相続税がかかる※契約内容によって異なる
ペット後見後見人が受け取った費用のうち、実費以外の費用に所得税がかかる

飼い主の死後に財産が譲渡される負担付遺贈と負担付死因贈与契約は相続税の課税対象です。

ペット信託は契約内容によって課税関係が変わるため、事前にサービス提供者や税務署に確認しておくとよいでしょう。

死後事務委任契約やペット後見は委託業務やサービスの対価として費用を支払うため、実費や経費以外の費用が所得税の課税対象になることがあります。ペット飼育にかかる費用を大きく上回る財産の譲渡があれば、贈与税の課税対象になる可能性も考えられます。詳細は税理士や税務署に確認してください。

「ペットのために財産を残したいが、受け取る人の相続税負担が気になる」という人は、地方自治体や所定の認定NPO法人に寄付をして相続税を抑える方法があります(寄付金控除)。これは相続財産のうち、寄付した部分が非課税になる特例制度です。

寄付金控除が適用される寄付先は国や地方自治体、所定の要件を満たした認定NPO法人など限定されています。詳細はこちらの記事で解説しているため、参考にしてください。

ペットの相続でよくある質問

ペットの相続に関して、よくある質問をQ&A形式で紹介します。

Q.遺言で「ペットに全財産を残す」と書かれていたら?

A.遺言は無効となります

日本の法律ではペットは相続人や受贈者になれません。よって、遺言で指定した内容は無効となり、全財産とペットの相続は遺産分割協議によって決まります。

Q.何も対策せず飼い主が死んだら、ペットはどうなる?

A.法律上は「動産」として扱われます

遺言や事前の契約など何も相続対策をしていない場合、ペットは動産として扱われ、遺産分割協議の対象になります。残された相続人同士で話し合い、誰がペットを引き取るのかを決めることになります。

Q.ペットを託した人が財産だけもらって世話をしない場合は?

A.飼育放棄の可能性はゼロではありません。確実性の高い方法を選びましょう

生前に契約をしていても、世話を託した人が途中で飼育を放棄する可能性は否定できません。ペットの飼育経験が豊富にあり信頼できる個人や業者に依頼すること、必要に応じて専門家も交えた契約を結ぶことが大切です。

家族信託で信託監督人を設定すると第三者がチェックする機能が働き、確実性を高められます。

Q.遺言書に「ペットを可愛がって」と書いて効果はある?

A.メッセージは伝わるものの、法的な効力はありません

「可愛がってほしい」という遺言は精神的なメッセージにはなりますが、遺族に対して飼育を強制することはできません。ペットに適切な環境を確実に整えたい場合は何らかの相続対策が必要です。

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執筆者

服部 ゆい

京都市在住。 金融代理店にて10年勤務したのち、2018年よりフリーライターとして独立。 金融・不動産・ビジネス領域の取材・執筆を中心に活動中。

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