相続専門コラム
生命保険金(死亡保険金)の請求は大切な相続手続きの一つです。
しかし家族の死があまりにも突然で、生命保険契約の有無すらわからない人もいるでしょう。今回は、亡くなった人が生命保険や死亡共済などに加入していたかどうかを調べる方法を解説します。
目次
亡くなった人の生命保険契約を調べる方法は3つあります。
「加入している保険会社名の見当もつかない」人は、1か2の方法で契約の有無と保険会社名を調べた後、3のステップに進んでください。
「保険会社名の見当が付いている」人は、3の方法で契約の詳細を調べていきましょう。
なお、当記事で調査対象とする“生命保険”には、共済組合の生命共済や損害保険会社の傷害保険(死亡保険金付帯のもの)も含めています。一部用語が異なる場合もありますが、当記事では“生命保険”に準じる用語で統一している点にご留意ください。
まずは遺品や郵便物などを調べ、契約の有無や保険会社名を調べていきます。
真っ先に探したいのは「保険証券」や保険に関する書類です。保険証券は保険契約の成立を証明する書類で、保険金・給付金額や保険期間、契約者名、被保険者名、受取人名などの契約内容がすべて記載されています。なお、共済契約は保険証券ではなく「共済証書」という名称です。
また、「契約のしおり」や「ご契約内容のお知らせ」と書かれた書類や郵便物も、保険契約を示す有効な手がかりです。特に、近年の保険会社は契約内容を知らせる保全活動に力を入れているため、通常の保険契約であれば、1年に1回必ず「ご契約内容のお知らせ」が送付されているはずです。郵送物のチェックも欠かさず行いましょう。
通常、生命保険料の引き落としは口座振替かクレジットカード納付です。銀行口座の通帳やクレジットカードの明細を確認し、保険料の引き落とし履歴をチェックしてみましょう。
保険料は月払いのほか、半年払いや年払いを選択できる会社もあります。念のため、過去1年分の明細を確認するといいでしょう。
ただし、契約時に保険料を一括で支払う「一時払い」や「全期前納」契約の場合、直近の明細を見ても契約の有無はわからない可能性があります。
直近の源泉徴収票や確定申告書があれば、生命保険契約の有無を確認できます。
ですが、源泉徴収票や確定申告書では契約の有無しかわかりません。契約の有無を確認した後は、続けて遺品や郵便物を元に契約の詳細を確認しましょう。10月~11月頃に届く「生命保険料控除証明書(共済契約は共済掛金払込証明書)」があれば、契約の詳細がわかります。
故人が会社員だった場合、会社経由で団体契約の生命保険に加入していることがあります。団体契約だと、加入している本人も契約を認識していなかった、というケースが少なくありません。勤め先に連絡し、団体契約の有無や保険内容の詳細を確認してみてください。
有料ですが、「生命保険契約者照会制度」なら国内の生命保険会社42社における契約の有無を一括照会できます。亡くなった人が契約者になっている契約だけではなく、被保険者(保険の対象者)になっている契約も照会可能です。
生命保険契約者照会制度は、契約者または被保険者が以下の状態になったときに利用できる制度です。オンラインまたは郵送での照会が可能です。
【利用できるケース】
【照会制度を利用できる人】
【利用時の照会費用】
1件につき3,000円(税込) ※災害時は無料
【利用の流れ(オンライン請求の場合)】
なお、制度利用料の支払いから照会結果の受け取りまで14営業日程度かかります
【必要書類(法定相続人が照会者となる場合)】
生命保険契約者照会制度でわかる情報は以下のものに限られます。
したがって、以下の情報は生命保険契約者照会制度で調べられません。
現状、国内すべての会社における保険・共済契約を一括で調べる方法はありません。生命保険契約者照会制度でわからない共済組合や損害保険会社の契約については、個別に問合せる方法しかないためご注意ください(問合せ方法は3のステップで後述しています)。
また、生命保険契約者照会制度で開示できる情報は契約の有無のみです。契約内容の確認や保険金請求はできません。
保険会社の見当が付いた人や、生命保険契約者照会制度で調べられない契約を知りたい人は、各社に問合せてください。
【保険会社や共済窓口の一覧】
なお、保険会社は破綻や合併、改称などを経て名前が変わっている可能性があります。
契約当時の保険会社が今は存在しなくても、契約自体は受け皿となる保険会社に移転されていることがあります。古い保険証券が手元にある人は上記の一覧を参考に、現契約を保有している保険会社に確認しましょう。
故人の生命保険金(死亡保険金)を請求し受け取る際は、以下5つの注意点に気を付けてください。
原則として、生命保険金(死亡保険金)を請求できるのは、契約者が指定した「保険金受取人」のみです。
生命保険金は受取人固有の財産であり、遺産分割の対象にはなりません。遺産分割協議がまとまる前でも、保険金受取人は保険金を請求・受け取ることが可能です。
保険金受取人が複数いる際の請求方法は保険会社によって違うため、各社に問合せてみてください。
保険金受取人がすでに死亡しているときは「亡くなった受取人の法定相続人」が請求権を持ちます。法定相続人が保険会社に連絡し、保険金受取人死亡の旨を伝えてください。
なお、かんぽ生命については独自の遺族制度を設けているため、受取人死亡時に請求権を持つ人は「亡くなった受取人の遺族」です。かんぽ生命の保険金請求は独特のため、契約がある人はこちらの記事も参考にしてください。
契約者が契約者貸付を利用していると、受け取れる生命保険金額は少なくなります。
契約者貸付とは、解約返戻金の一部を原資に保険会社からお金を借りる制度です。契約者がこの貸付制度を利用している途中で保険事故が発生すると、契約上の死亡保険金額から、契約者貸付利用の返済額と利息が差し引かれた保険金が支払れます。
この場合、相続税の課税対象になるのは契約上の死亡保険金額ではなく、実際に受け取った死亡保険金額です。契約者貸付に相当する返済・債務が相続の対象になることはありません。ただ、受け取れる保険金額は少なくなるので気を付けてください。
契約者と被保険者が異なる契約で、契約者は死亡したものの被保険者は存命というケースがあります。たとえば、以下のような生命保険契約です。
この場合、被保険者が存命しているので契約は継続します。ただし、契約者・受取人の夫が持っていた保険金や解約返戻金を受け取る権利は相続財産となり、課税対象になります。
通常は、亡くなった契約者(夫)の法定相続人が権利義務一切を承継します。法定相続人が複数いるときは、相続人全員の同意に加えて被保険者の同意と生命保険会社の承諾が必要です。新しい契約者は承継した権利が相続税の課税対象となりますが、この権利に生命保険の非課税枠は適用されません。
なお、生命保険契約に関する権利の評価額は、契約者死亡時の解約返戻金の額となります
オフショア生命保険とは、無税あるいは税率が極めて低い国で販売されている生命保険のこと。いわゆる海外生命保険です。
海外生命保険とはいえ、受け取った生命保険金(死亡保険金)の扱いは国内生命保険と同様で相続税の課税対象です。ただし、保険金請求は現地の言葉で保険会社とやり取りする必要があります。
まずは、オフショア生命保険を案内したブローカーやIFAなどの担当者を探しましょう。担当者が日本人または日本語話者であれば、請求手続きを依頼できる可能性があります。担当者が見つからない場合は、現地の税制や海外保険事情に詳しい専門家に相談・依頼するなどして、手続きを進めてください。
生命保険金(契約者と被保険者が同一の契約)や保険金に関する権利は相続税の課税対象です。他の相続財産と合算して基礎控除額以上になる場合には、相続税申告が必要です。
なお、相続人が受け取った生命保険金(死亡保険金)には「生命保険の非課税枠」があります。受け取った保険金額が非課税限度額(500万円×法定相続人の数)以下であれば、相続税申告は必要ありません。ただし、非課税限度額の計算は間違いやすいため、まずは申告書に沿って計算してみてください。計算方法に不安がある人は、税務署や税理士に相談するのも一つの方法です。
→相続税はかからないけど申告が必要なケースとは?義務・不要・任意のケースをそれぞれ解説
税理士なし、予備知識なしでも、相続税申告は可能です。
相続専門の弊社が開発したソフト「AI相続」なら、簡単なフォームに沿って入力するだけで相続税申告書を作成できます。しかも本当に、無料で申告書の出力までできるんです。
まずは一度お試しください。
カンタン操作でラクに申告書作成ができる!完全無料「AI相続」
困った人が立ち寄れる「みなと」でありたい。
そんな想いを胸に、私たちは仕事をしています。
相続税の分からないこと、相続した不動産や宝飾品についての悩みや、気になること。どうぞお気軽にご相談ください。
どのような解決方法があるか、最適なものはなにか、お客様のご要望に合わせてご提案します。
相続税申告を任せてしまいたい、という方には「シンプル相続」プランもご用意。
相続財産額に比例して価格が高くなるのが一般的ですが、弊社は比例しない一律料金368,000円(税込)。
満足いただけるサービスを、納得プライスでご提供いたします。
みなと相続コンシェルへのお問い合わせはこちらです。
服部ゆい
京都市在住。金融代理店にて10年勤務したのち、2018年よりフリーライターとして独立。
金融・不動産・ビジネス領域の取材・執筆を中心に活動中。
監査法人トーマツ、独立系コンサルティング会社で業務の経験を積み、2013年に相続税専門税理士として独立。相続において大切なことを伝えるべく「笑って、学んで、健康に」をモットーに、社会人落語家「参遊亭英遊」としても活躍。高座に上がる回数は年間80回超。著書に『知識ゼロでもわかるように 相続についてざっくり教えてください』(総合法令出版)がある。 HP:埼玉・大宮あんしん相続税相談室