相続専門コラム
「亡くなった家族の医療費が高額だったけど、高額療養費って請求できるの?」
当事者が亡くなった後でも、高額療養費の請求は可能です。ただし、手続きには期限があること、払い戻されたお金は相続財産になる点には注意が必要です。
本記事では、亡くなった人の高額療養費を請求する方法と制度の概要、支給申請に関する注意点を解説します。これから手続きをする人はぜひ参考にしてください。
目次
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高額療養費制度とは、公的医療保険に加入している人の医療費負担を軽減する仕組みです。一か月の自己負担が一定額を超えた場合、所定の手続きをすることで負担した医療費の一部が還付されます。当事者が亡くなった後でも請求は可能です。

では実際に、高額療養費の対象者が還付金を受け取る前に亡くなった場合はどうなるのでしょうか。相続発生時のポイントは下記の3つです。

特に重要なポイントは支給申請の期限で、「診療を受けた月の翌月初日から2年以内」となっています。期限を過ぎると払い戻しを受けられないため、速やかに手続きを行いましょう。

医療保険によって、医療費が高額療養費の対象になることを通知してくれたり、還付金を自動的に振り込んでくれたりすることがあります。また、一度でも高額療養費を請求すると、次回以降は手続き不要で「自動支給」される場合もあります。
請求状況がどうなっているのか、まずは各医療保険に問合せてみるとよいでしょう。

そもそも、高額療養費の対象になる医療費は何で、幾らくらい戻ってくるのでしょうか?
制度の基本を解説します。
基本的に、すべての公的医療保険制度が対象です。

| 医療保険制度 | 加入対象者 |
|---|---|
| 協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険) | ・中小企業勤めの人 ・原則、74歳未満 |
| 組合健保(組合管掌健康保険) | ・大企業勤めの人 ・原則、74歳未満 |
| 各種共済組合 | ・公務員 ・原則、74歳未満 |
| 市町村国保 または 独自の国民健康保険組合 | ・自営業者 ・原則、74歳未満 |
| 後期高齢者医療保険 | ・原則、75歳以上のすべての人 |
74歳までは働き方によって加入する医療保険が異なりますが、75歳以上になると、原則としてすべての人が後期高齢者医療保険制度に移行します。いずれの制度でも高額療養費の対象になりますが、手続きの窓口が変わる点に留意しましょう。
高額療養費で払い戻しの対象になるのは、公的医療保険が適用される医療費です。

【対象となる医療費】
【対象外となる費用】
対象となる医療費のうち、対象の患者が支払う「一定の自己負担額を超えた部分」が払い戻しされます。自己負担額は人によって異なるため、後述する上限額を参考にしてください。
高額療養費の還付額は【実際に支払った医療費 – 自己負担の上限額】で計算します。

この自己負担額は、保険加入者の所得や年齢によって決まります。
【自己負担の上限額(70歳以上:2025年9月末時点)】
| 所得区分(目安) | 自己負担限度額(月額) | 窓口で30万円負担した ときの還付例※ |
|---|---|---|
| 年収約1,160万円~ (標準報酬月額83万円以上) | 25万2,600円 +(医療費-84万 2,000円)×1% | 自己負担限度額:25万4,180円 還付金:4万5,820円 |
| 年収約770~1,160万円 (標準報酬月額53~79万円) | 16万7,400円 +(医療費-55万8,000円)×1% | 自己負担限度額:17万1,820円 還付金:12万8,180円 |
| 年収約370~770万円 (標準報酬月額28~50万円) | 8万100円 +(医療費-26万7,000円)×1% | 自己負担限度額:8万7,430円 還付金:21万2,570円 |
| ~年収約370万円 (標準報酬月額26万円以下) | 個人ごと:1万8,000円 世帯ごと:5万7,600円 | (個人ごと) 還付金:28万2,000円 |
| 住民税非課税世帯 | 個人ごと:8,000円 世帯ごと: 1万5,000円~2万4,600円 | (世帯ごと) 還付金:29万2,000円 |

【自己負担の上限額(69歳以下:2025年9月末時点)】
| 所得区分(目安) | 自己負担限度額(月額) | 窓口で30万円負担した ときの還付例※ |
|---|---|---|
| 年収約1,160万円~ (標準報酬月額83万円以上) | 25万2,600円 +(医療費-84万 2,000円)×1% | 自己負担限度額:25万4,180円 還付金:4万5,820円 |
| 年収約770~1,160万円 (標準報酬月額53~79万円) | 16万7,400円 +(医療費-55万8,000円)×1% | 自己負担限度額:17万1,820円 還付金:12万8,180円 |
| 年収約370~770万円 (標準報酬月額28~50万円) | 8万100円 +(医療費-26万7,000円)×1% | 自己負担限度額:8万7,430円 還付金:21万2,570円 |
| ~年収約370万円 (標準報酬月額26万円以下) | 世帯ごと:5万7,600円 | 還付金:24万2,400円 |
| 住民税非課税世帯 | 世帯ごと: 3万5,400円 | 還付金:26万4,600円 |

※窓口で30万円負担=実際にかかった医療費100万円として計算
※2025年9月現在、厚生労働省の専門委員会で高額療養費の引き上げに関する議論が行われており、今後、自己負担限度額は上がる可能性があります。
たとえば、年収500万円の人が1か月に30万円(10割で100万円)の医療費を支払った場合、戻ってくるお金は「21万2,570円(年齢問わず同一)」です。
医療費負担が多い人、所得が低い人はさらに還付額が増えます。また、1年のうちに3回以上も上限額に達した場合、4回目から「多数回」該当となり、上限額が下がります。
なお、加入している医療保険によっては組合独自の付加給付があり、負担額が抑えられる仕組みがあります。大企業の「組合健保」や公務員の「共済組合」は付加給付を設けていることがあるため、規約を確認してみるとよいでしょう。
高額療養費の自己負担額は月単位(1日~末日)で計算するため、月をまたいだ医療費は合算されません。たとえば、年収約500万円の人が2か月にわたり入院・通院し、下記の医療費がかかったとします。

この場合、9月分と10月分の医療費は別々に計算します。よって、それぞれの医療費は1か月の自己負担限度額を超えず、高額療養費の対象になりません。
同じ負担額でも制度の対象外になるケースがあるため、「その医療費がいつ発生したのか」をよく確認してください。
基本的に、高額療養費の払い戻しには3か月以上かかります。

実際の診療報酬明細書(レセプト)の審査を経て還付される金額が決定するため、すぐに受け取れるわけではありません。相続が発生したら、速やかに手続きを進めましょう。

亡くなった人が高額療養費の請求(支給申請)をしていない場合、遺族が代わりに手続きする方法を解説します。
原則として、「亡くなった人の相続人」が対象です。
ただし、医療保険によっては「相続順位が一番高い相続人のみ」「代表者1人のみ」だけと指定している場合があります。
特に国民健康保険や後期高齢者医療保険制度の場合、自治体によって対応が異なる可能性があります。詳細は必ず確認しておきましょう。
原則として、「亡くなった人が加入していた医療保険」が申請先です。
国民健康保険や後期高齢者医療制度は住んでいる自治体が窓口ですが、それ以外は亡くなった人が加入していた医療保険(協会けんぽや組合健保など)が窓口です。
会社員や公務員であれば、所属組織の担当部門が手続きを取りまとめていることがあります。組織に確認してみてください。
亡くなった人の高額療養費について、支給申請の際に必要な書類は下記のとおりです。

| 必要書類 | 入手先 |
|---|---|
| 高額療養費支給申請書 | ・自治体や各医療保険のサイト |
| 医療費の領収書 | ・各医療機関、処方箋の薬局等 ※不要な場合もある |
| 申請する人と亡くなった人の関係がわかる書類 | ・戸籍謄本、法定相続情報一覧図のコピーなど |
基本的には、高額療養費の申請と同時に被保険者死亡の手続きを行うため、そこで別途書類を求められることがあります。このとき、申請する人(相続人)の本人確認書類が求められることもあるため、詳細は各医療保険に確認するようにしてください。
先述のとおり、高額療養費の支給申請期限は「診療を受けた月の翌月の初日から2年」までとなっています。

2年をすぎると請求できなくなるため、早めに手続きをすませましょう。

相続人が受け取った高額療養費の還付金は相続財産となります。よって、下記のポイントに気をつけてください。

高額療養費の還付金が口座に振り込まれるまで3か月以上かかるため、場合によっては払い戻しを受ける前に相続税申告・納付が必要です。プラスの財産が多く相続税負担が気になる人は、早めに還付手続きをすませておくと安心です。
一方でマイナスの財産が多く、相続放棄の検討が必要なときは慎重な対応が必要です。まずは遺産の内容を調査して、対応に迷ったときは税理士など専門家に相談することも検討してください。
京都市在住。 金融代理店にて10年勤務したのち、2018年よりフリーライターとして独立。 金融・不動産・ビジネス領域の取材・執筆を中心に活動中。