相続専門コラム

金・純金・地金を申告しないと追徴課税!金の種類と相続税評価方法

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「金・純金・地金」は仏像や仏具なども含めて相続税の課税対象です。また、申告をしないで隠そうとしても税務署は財産を把握しているためバレますので、必ず申告しましょう。
今回は、「金・純金・地金」を申告すべき理由(バレる理由)と相続税評価方法について解説します。

「金・純金・地金」は必ず申告しなければダメ

金・純金・地金_見出し画像

「金・純金・地金」は相続税の課税対象です。被相続人の財産から「金・純金・地金」が見つかった場合は必ず申告しましょう
申告せずに、税務調査の指摘などを受けてあとから申告すると、過少申告加算税などのペナルティーが課されます。税金を余分に納めることになるほか、逮捕に至った前例も多くあります。

保有期間や売却予定の有無にかかわらず絶対に申告が必要

「金・純金・地金」に非課税枠や特例ルールはありません。被相続人が所有していたものがある場合は、必ず申告する必要があります。

仏像仏具であっても金は非課税の祭祀財産と認められるのは困難

仏像や仏具などの祭祀財産は相続税において非課税となる特例がありますが、これは日常の礼拝に使う場合に限り認められます。
ただし、日常の礼拝に使っていたとしても「投資対象となるものは相続税の課税対象となる」とされており、純金製の高価な仏鈴(おりん)や仏像などが非課税の祭祀財産と認められるのは難しいでしょう。

祭祀財産として認められるのは、日常的に礼拝に使われているという条件の他、社会通念上認められる程度の額であることが必要と考えられます。
参照>>国税庁 タックスアンサーNo.4108 相続税がかからない財産
参照>>日本経済新聞-金の仏具、非課税で脚光

なぜ純金の所有が税務署にバレるのか?

積み立てはもちろんのこと長期間貸金庫で保管している場合であっても、「金・純金・地金」の存在は税務署にバレます。税務署が貴金属の存在を把握できる理由は、以下の4点があげられれます。

金がバレる4つの理由

バレる理由①売却時に支払調書で補足されるから

金地金の譲渡所得の課税逃れを防ぐ目的で「金地金等の譲渡の対価の支払調書制度」が施行され、2012年から貴金属売却時のルールが厳格化されました。
200万超の金地金等を売却や交換した場合、マイナンバーを含む支払調書が業者から税務当局に提出されることになりました。

また、200万円以下の取引であっても業者は「古物営業法」の規定に準じて本人確認およびその記録を実施しており、支払調書が提出されない金額の売却であっても記録が残ります。
仮に、相続において金地金等の存在を隠せたとしても、売却時において全くの匿名で現金化することは不可能と考えた方がよいでしょう。

バレる理由②購入時に補足されているから

2008年以降において金地金等を購入する際には「犯罪による収益の移転防止に関する法律」により、本人確認とその記録が業者に義務付けられました。取引記録の法定保存期間は7年間ですが、取引業者においてはそれ以上の期間、保管しています。

相続税申告書の内容に税務署が疑義を持って、金の販売業者に対しても調査が行われた場合には、購入の事実を隠すことはできません。

バレる理由③KSKシステムで財産総額が把握されているから

KSKシステムとは納税者の情報を一元管理する国税総合管理システムの略称です。
このシステムによって相続税申告の対象となるような資産家の財産は、過去の申告実績や支払調書からざっくりと把握されています。

そのためKSKシステムが推測するおよその財産内容から大きく外れて少ない財産内容で相続税申告が行われると、税務調査の対象となることになります。
特に金を使って相続税逃れをしようとする手法はこれまでも多く行われてきたため、重点的に調査が行われます。その結果、摘発も多く行われてきました。

バレる理由④税務調査でお金の流れが丸裸になるから

税務調査において税務署の権限は絶大です。被相続人や相続人の金融機関のお金の流れの全てを調べることができ、大きな支払があった場合は水面下での半面調査とともに、質問検査権に基づく納税者へのヒアリングが行われます。

貸金庫の存在は真っ先に把握されますし、金融機関への照会業務自体も2021年10月よりオンライン化されて、より活発に行われるようになりました。
お金の流れを追われるため、金の購入費用はもちろんのこと、タンス預金も隠すことは難しいでしょう。

万一、申告後に「金・純金・地金」が見つかった場合は申告をやり直す

相続の申告後に「金・純金・地金」が見つかった場合は、申告をやり直す必要があります。これを修正申告といい、修正申告をした場合は状況に応じて延滞税と過少申告加算税が課されます。

しかし、税務調査で指摘を受ける前の自主的な修正申告の場合は過少申告加算税が免除されます。相続税の申告後に「金・純金・地金」が見つかった場合は、早急に修正申告をしましょう。

相続税評価は被相続人の死亡日の買取価格

「金・純金・地金」の相続税評価は、被相続人の死亡日の買取価格で行います。被相続人の死亡日が買取業者の休業日などで金相場がない場合は、被相続人の死亡日に一番近い日の金相場を採用しましょう。

被相続人の死亡日に近い日が2日ある場合は、その平均値を相続税評価額とします。
採用すべき「買取価格」は金の種類によって異なり、以下のとおりとなります。

刻印のある地金

基本的に地金には購入した業者の刻印があります。地金に刻印がある場合は刻印の業者に問い合わせてその業者における買取価格を採用するのが基本です。

しかし、「刻印されている業者の買取価格を採用しなければならない」と決められているわけではありませんので、金買取専門店などの公式HPに記載されている買取価格を引用することも認められます。

刻印の無い地金

地金に刻印がない場合は、金買取専門店などの公式HPに記載されている買取価格を参考にしましょう。
HPには地金は1グラムあたりの価格が公表されていますから、地金のグラム数をかけることで、相続税評価額の算出が可能です。

純金積み立て

積み立てをしている業者の買取価格が相続税評価額になります。取扱い業者に相続発生日時点の積み立て数量と買取価格のわかる資料を発行してもらうようにしましょう。

金貨(日本の現在の貨幣として流通しているもの)

昭和以降に発行された、天皇陛下の御在位を記念する金貨やオリンピックの記念金貨など、比較的近年に発行された金貨で、貨幣として現在も流通するものは額面通りの価額を相続税評価額とすることが基本となります。

しかし、昭和天皇御在位60年記念10万円金貨(昭和61年発行)や、天皇陛下御即位記念10万円金貨(平成2年発行)、皇太子殿下御成婚記念5万円金貨(平成5年発行)など、金の重量が非常に多く額面価格と買取業者における買取価格の間に大きな乖離があるものは、買取価格を相続評価とするのが良いでしょう。

金貨(日本で現在の貨幣として流通できないもの)

海外の金貨や、日本の金貨であっても明治時代に発行された旧10円金貨や旧2円金貨など、現在貨幣として日本で流通されていない金貨は、被相続人が死亡した日の金貨買取業者の価格を採用します。

宝飾品

宝飾品の相続税評価は、業者買取価格や精通者の意見を参考にしましょう。
これらは、宝石買取専門店や質屋に聞くことで分かりますが、買取専門店のHPを参照する形でも構いません。

ただし、宝飾品の買取価格はお店によって大きく異なるため、高額な品物の場合は宝石鑑定士に鑑定を依頼して「売買実例価額」や「精通者意見価格」を出してもらうのが確実です。

鑑別書や鑑定書は有料ですが、より客観的な相続税評価となります。
なお、相続手続きが完了するまでに宝飾品を売却した場合は、売却額を相続税評価額とします。

貴金属にかかる相続税は他の遺産と合算した総額で計算される

金地金等にかかる相続税は、遺産全体の合計額によって決まります。
しかし、相続税には以下の計算式で算出されるとおりの基礎控除があるため、遺産があっても相続税の課税対象にならないケースが多々あります。

相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人数

相続税は遺産総額が基礎控除額を超える場合にのみ、超えた分に対して課税されます。
たとえば、法定相続人が3人いる場合は、遺産総額4,800万円までは相続税はかからず相続税申告も不要です。
参照>>基礎控除の額の計算方法
参照>>相続税額の計算方法

金の売却時にかかる所得税を少なくさせる3つの工夫

相続した金地金等を売却して利益が出た際には所得税がかかりますが、売却時のちょっとした工夫で所得税を安く抑えることができる可能性があります。ここでは、その方法を順に確認していきましょう。

①所有期間が5年超となるまで待つ

金を一般の方が売却した場合における税率は、被相続人が購入してから5年超となるか否かで大きな差があります。所有期間5年超で売却する方がそうでない場合に比べて税額が安くなりますので、可能であれば5年たってから売却する方がお得になります。

譲渡所得の種類所得の計算
短期譲渡所得(所有期間5年以内)(売却価格ー取得費)-50万円
長期譲渡所得(所有期間5年超)((売却価格-取得費)-50万円)×1/2

②相続税の申告期限から3年以内に売却する

相続で取得した財産を相続税申告期限から3年以内に売却する場合には、その財産を取得するために払った相続税を取得費として加算することが認められています。

このルールのことを「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」といい、適用できれば計算上の取得費を増やすことができますので有利です。
取得費に加算できる額は以下のとおりです。

(取得費に加算する相続税額)=(その者の相続税額)×(譲渡した財産の相続評価額)÷(債務控除前のその者の相続財産の評価額合計)

③複数年に分けて売却する

金地金等の売却にかかる所得税は総合課税となるため、所得が多いほど高い税率が適用されます。
そのため一気に売却して税額が高くならないように、複数年に分けて売却することで所得税額を抑えることができる可能性があります。

購入価格不明の金を売却した場合の所得税について

金地金等の売却において購入金額(取得費)がわからない場合には、売却価格の5%が取得費とみなされるため、課される税額も一般的には大きくなります。5%が取得費としてみなされるということは、売却価格の95%が利益とみなされるということであり、譲渡所得が非常に大きくなり不利になります。

ですので、金地金等を購入する場合は、売却する時のために領収書や計算書などといった購入金額が分かる書類を保管しておくことがとても大切です。

どうしても購入時の資料がない場合は、金相場(購入日時が分かっている場合)や通帳の出金記録状況からの推測による取得価格が認められることがあります。
また、地金(インゴット)に製造番号(シリアルナンバー)が刻印されている場合には製造元に問い合わせることで取得価格が分かる場合もありますので、確認してみましょう。

金がある場合のAI相続での相続税申告書作成方法

AI相続は弊社が運営する無料クラウド相続税申告書作成ソフトです。わかりやすい画面にしたがって入力をしていけば、誰でも簡単に相続税申告書の作成ができます。

AI相続なら相続財産に金がある場合の相続税申告書の作成も簡単です。
金の入力は、財産入力画面の中の「その他の財産」の欄から入力してください。あとは入力画面にあるマスに順番に入力していくだけで申告書の作成が可能です。

金・純金・地金のAI相続での入力方法説明図

まとめ

金・純金・地金(インゴット)などの貴金属は相続税の課税対象です。
相続財産が基礎控除以上であり納税が必要にもかかわらず金の存在を申告をしないことは違法です。のちのち加算税や延滞税といったペナルティーの対象となることはもちろんのこと、相続税法違反で逮捕されるケースもあります。必ず申告するようにしましょう。

みなと相続コンシェルはこれまでの専門家のサービスの在り方に疑問を持ち、より良いサービスを目指しております。何かあればどうぞお気軽にお問い合わせください。

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この記事の監修者

石倉 英樹(相続専門の公認会計士・税理士)

監査法人トーマツ、独立系コンサルティング会社で業務の経験を積み、2013年に相続税専門税理士として独立。相続において大切なことを伝えるべく「笑って、学んで、健康に」をモットーに、社会人落語家「参遊亭英遊」としても活躍。高座に上がる回数は年間80回超。著書に『知識ゼロでもわかるように 相続についてざっくり教えてください』(総合法令出版)がある。 HP:埼玉・大宮あんしん相続税相談室

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