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遺産分割協議に期限はないが、相続手続きに危険なタイミングあり

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遺産分割協議の期限はないが、危険なタイミングあり

遺産分割協議には法的な期限がありません。

そのため、話し合いがまとまらなければ10年でも20年でも協議を継続可能です。ただし、期限がないからとダラダラと協議を続ける過程で種々の手続きを怠れば、余計に税金がかかるなどの不利益が生じます。

今回は、遺産分割協議の過程で不利益が生じる危険なタイミングと、早く協議を終わらせるための方法をご説明します。

遺産分割協議に法的な期限はないが、相続手続きには危ないタイミングが6つある

2021年4月に民法が改正され、相続開始後10年以上経つと特別受益や寄与分の主張ができなくなりました。この改正により、「遺産分割協議は10年以内に決着をつけなければならない」と思っている人もいるのではないでしょうか。

しかし、10年とはあくまで特別受益や寄与分の主張期限です。遺産分割協議自体は、相続開始から10年以上経っていても継続できます。他方、協議が長引けばその過程にある手続きを忘れやすくなり、さまざまな不利益が発生します。

また、時間が経つほど話し合いがこじれて裁判に至る可能性が高くなりますが、時間と費用をかけて裁判で争っても結局は法定相続分で決着が付くケースがほとんどです。

したがって、期限がなくても遺産分割協議は早く終わらせるに越したことはありません。ここでは、遺産分割協議が長引けばどのような不利益があるのか、危険なタイミングを6つご紹介します。

1.【3か月を超える危険】相続の放棄や限定承認をできなくなる

相続開始を知ってから3か月を超えると、原則として相続財産を放棄することも、限定した範囲で財産を相続することもできなくなります。

3か月を過ぎれば、相続財産の中にたとえ借金があっても、すべての財産を引き継ぐしかありません。これを相続の単純承認といい、被相続人の借金も借金以外の財産もすべてを引き継ぐことになります。そのため、相続財産の中で借金などマイナスの財産が多い場合には、相続人の生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。

しかし3か月以内であれば、財産をまったく相続しない「相続放棄」か、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ「限定承認」という相続方法を選択できます。相続財産に多額の借金が含まれている可能性がある場合は、3か月以内に放棄するか限定承認するかを検討し、どちらかの方法を選択してください。

ただし、被相続人に多数の財産があるなどの理由で、3か月以内に放棄か限定承認かを決めるのが難しいケースもあるでしょう。相続財産が複雑で時間がかかる場合は、相続開始を知ってから3か月以内に家庭裁判所に申し立てることで放棄や限定承認期間の伸長が可能です。

2.【10か月を超える危険】相続税申告・納税期限

もっとも重要なタイミングが、この相続税申告期限です。
相続が発生すると、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告と納税を行わなければなりません。たとえ財産調査に時間がかかっていたとしても、遺産分割の話し合いがまとまらなくても、申告と納税期間は10か月と決まっています。

遺産分割が完了しないまま相続税申告期限を過ぎてしまえば、相続人全員に無申告加算税がかかり、全員が損をしてしまいます。相続税申告・納税期限は絶対に守りましょう。

とはいえ、10か月以内に遺産分割が完了していなければ通常の申告・納税はできません。対処法として、一旦は法定相続分で分けたとして仮申告し、遺産分割が正式に完了したときに修正申告を行います。こうすれば無申告加算税は課されません。

ただし、未分割のまま仮申告すると、配偶者の税額軽減や小規模宅地の特例を受けられなくなります。そこで「申告期限後3年以内の分割見込書」を出しておけば、申告期限から3年以内に遺産分割・修正申告することでこれらの特例を適用できます。

3.【1年を超える危険】遺留分の減殺請求ができなくなる

兄弟姉妹以外の相続人は、相続において不公平な遺言や一部の相続人への不当な生前贈与があったとき、法律に基づいた割合で自身の遺産を請求できます。この、“遺言でも奪うことができない相続人の遺産割合”を「遺留分」と言いますが、遺留分の請求はその事実を知ったときから1年間が期限です。

遺産分割の話し合いが平行線のまま1年を過ぎてしまうと、せっかくの請求権を失ってしまうので気をつけましょう。 遺留分は、相続人に自動的に留保される遺産ではありません。

請求しなければ最低限の法的利益を失うため、相続において遺留分侵害があるときは速やかに減殺請求しましょう。

4.【3年を超える危険】不動産の名義変更に関する罰則

不動産を相続した相続人は、相続開始から3年以内に名義変更登記手続きをしなければ10万円以下の過料が科せられます。話し合いがまとまらず不動産名義を被相続人のままにしていると、金銭の支払いが必要になるのです。

この相続登記義務は2024年4月1日からの施行ですが、法改正以前の相続登記未登記物件にも適用されるので要注意です。ただし、3年以内に不動産の分割をどうするか決まらない場合は、相続人であることを申告すれば相続登記義務を免れる相続人申告登記制度が設けられました。相続人申告登記制度の利用は、法務局に申し出る必要があります。

5.【3年10か月~4年を超える危険】遺産がいまだに遺産分割できていない場合

先ほど、「相続発生から10か月以内に遺産分割が完了しなければ、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出して3年以内に遺産分割・修正申告をしましょう」とお伝えしました。分割見込書を提出していれば、配偶者の税額軽減など相続税の各種特例を後から適用できるからです。

しかし、申告期限後3年以内の分割見込書を提出してから3年経っても、いまだに遺産分割協議が継続中というケースもあるでしょう。その場合は、相続発生から3年10か月を経過する日の翌日~2か月を経過する日(4年)までに、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出してください。

この承認申請書を提出しなければ、配偶者に対する税額軽減など各種特例などを後から適用できなくなります。協議が長引いている場合は、相続発生から4年が経過する前に必ず承認申請書を提出しましょう。

6.【10年を超える危険】特別受益や寄与分の主張ができなくなる

先述のとおり、相続開始から10年以上経つと特別受益や寄与分の主張ができなくなります。

特別受益とは被相続人から遺贈や生前贈与などで得ていた特別な利益を差し、寄与分とは被相続人の財産の維持や増加の寄与分を指します。一部の相続人に特別受益や寄与分がある場合には、それを主張することで相続における不公平を調整できる役割があるのです。

しかし、10年を超えれば法定相続分を基準とした遺産分割しかできなくなります。つまり、相続人間の不公平を調整することができなくなるので注意しましょう。この期限は遺産分割を阻むものではありませんが、より公平な遺産相続を行ううえで気をつけておきたいポイントです。

それでも遺産分割協議が長引きそうな場合の対処法

「早く終わらせるほうがいいのはわかっているけど、話し合いがまとまらない」ケースもあるでしょう。たとえ血を分けた家族でも、価値観や考え方、被相続人への思いや関わり方などの実情は個々の相続人で異なります。また、家族だからこそ感情的になってしまう側面もあるのではないでしょうか。

遺産分割協議の決着が付かなければ、いずれは調停から審判、最終的には裁判に発展していく可能性があります。ただ、多くの場合は法定相続分で決着が付きます。時間とお金と精神的疲労を費やして家族と争っても、結局は法定相続分しかもらえません。

「個々の実情が異なる以上、完全に平等な遺産分割など不可能」と認識したうえで、早期に決着をつけてしまったほうが有意義な時間を過ごせるのではないでしょうか。それでも、どうしても感情的になってしまう場合は、冷静になるために客観的な視点を持つ弁護士を入れて話し合うといいでしょう。

弁護士か司法書士、どちらに相談したらいいの?

相続において相談できる専門家といえば弁護士と司法書士がいますが、遺産分割協議については弁護士に相談しましょう。司法書士は相続人の調査や不動産相続登記などできる業務が限られていて、相続人同士のトラブル、家庭内紛争の対応はできません。

遺産分割協議の過程で話がこじれてしまった場合、相続人に代わって交渉を行えるのは弁護士だけです。そのため、基本は弁護士に相談することをおすすめします。協議の場に弁護士が入れば、過去の判例などふまえて客観的かつ冷静な判断がしやすくなるはずです。

遺産分割を禁止するという方法も

遺産分割は早く終わらせるに越したことはありません。しかし、被相続人を亡くしたばかりで相続人同士が感情的になっている、相続人の中に未成年や認知機能が低下した高齢者がいるなど、相続開始直後だと逆に話し合いが難航してしまうようなケースもあります。

そんなときは、被相続人の遺言や相続人同士の合意により、遺産分割そのものを禁止することが可能です。相続から一定の時間を設けることで、円滑な遺産分割協議を進めることを目的に行われます。遺産分割禁止の期限は、原則として最長5年です。親を亡くしたばかりで感情的になっている場合は、あえて遺産分割を禁止し、お互い冷却期間を置くのも一つの方法でしょう。

なお、遺産分割の禁止は被相続人の遺言または相続人の合意で行うことができますが、まれに家庭裁判所から遺産分割を禁止されるケースもあります。たとえば被相続人の父親が詐欺などの犯罪行為で訴えられているなど、何らかの事情がある場合は、遺産分割の調停や審判の結果、家庭裁判所に禁止されることがあります。この場合も、他の事例と同様、禁止期間は原則5年以内です。

まとめ

遺産分割協議には法的な期限がないため、話し合いがまとまらなければ10年経っても20年経っても遺産を分割できません。その過程で相続税申告や納税などの手続きを怠ると、無申告加算税や過料など相応のペナルティーがあるので注意が必要です。

遺産分割協議の行く末は調停、審判、裁判となることが多いですが、裁判の決着は法定相続分になることがほとんどです。時間と費用と精神を消耗しながら裁判をしても、結局は法定相続分になるだけなのです。第三者である弁護士を挟んだうえで冷静に話し合いを進め、早期に協議を終わらせましょう。

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執筆者

服部ゆい
京都市在住。金融代理店にて10年勤務したのち、2018年よりフリーライターとして独立。

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この記事の監修者

石倉 英樹(相続専門の公認会計士・税理士)

監査法人トーマツ、独立系コンサルティング会社で業務の経験を積み、2013年に相続税専門税理士として独立。相続において大切なことを伝えるべく「笑って、学んで、健康に」をモットーに、社会人落語家「参遊亭英遊」としても活躍。高座に上がる回数は年間80回超。著書に『知識ゼロでもわかるように 相続についてざっくり教えてください』(総合法令出版)がある。 HP:埼玉・大宮あんしん相続税相談室

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