相続専門コラム

相続財産である故人の仮想通貨を調べる方法

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故人が保有していたビットコインやリップルといった仮想通貨は、財産的な価値があるため相続の対象となります。

しかし実際に相続が発生した際、故人が保有していた仮想通貨の保管場所や取り出し方がわからず、悩む人は少なくありません。そこで当記事では、故人の仮想通貨を調べて取り出す方法を解説します。

※仮想通貨の法令上の呼称は「暗号資産」ですが、当記事では広く一般に浸透している「仮想通貨」という呼称を使用しています。

故人が保有していた仮想通貨を調べる際の3ステップ

2024年現在、仮想通貨の保有状況を一括で調べるようなシステムはありません。そのため、亡くなった人が保有していた仮想通貨を調べるにはいくつかのステップが必要です。

  1. 仮想通貨の保有状況を調べる
  2. 仮想通貨取引所に問い合わせる
  3. 仮想通貨ウォレットを調べる

①で仮想通貨の保有状況を調べて保管場所を特定したら、保管場所である②(取引所)と③(ウォレット)を調べて仮想通貨を取り出すという流れになります。「保有の有無や保管場所は把握している」という人は、1を飛ばして2・3のステップに進んでください。

1.仮想通貨の保有状況を調べる

「仮想通貨を保有していたかどうかがわからない」場合は、複数の手がかりを元に仮想通貨の保有状況を調べ、保管場所を特定します。

仮想通貨の手がかりとなる遺品の例

遺品を調べる際は、金融庁が公表している国内の暗号資産交換業者登録一覧(2024年5月31日現在)が参考になります。一覧表を片手に以下の遺品やネットの痕跡を調べ、取引所や仮想通貨(暗号資産)の名称がないか探してみてください。

  • スマホやパソコン、タブレット端末:仮想通貨関連のアプリはないか?
  • インターネットブラウザの検索履歴やブックマーク:仮想通貨取引所のサイト名はないか?
  • 受信メールおよび郵便物:仮想通貨に関連したe-mailや書類は届いていないか?
  • 確定申告書:雑所得として仮想通貨の利益を申告していないか?
  • 預貯金口座の入出金明細:仮想通貨取引所との取引履歴はないか?
  • 金庫の中にある端末や紙:仮想通貨のマークや数字が印字されている用紙や、見たことがないUSBデバイスなどがないか?

遺品の中で仮想通貨に関連する情報を見つけたら、仮想通貨の保管方法を特定します。保管方法にはいくつか種類があるため、以下を参考に特定してください。

仮想通貨の保管方法には種類がある

仮想通貨の保管方法は大きく分けて、取引所が保管する方法と自身で保管する方法の2つあります。

種類秘密鍵の保管場所    管理者  残高を調べて取得する方法
仮想通貨取引所      取引所の業者が保管取引所の業者故人が利用していた取引所に問合せて相続手続きを行う
ソフトウェア
ウォレット
スマホやPCのアプリ内で保管ユーザー   故人の専用ウォレットにアクセスする
ハードウェア
ウォレット
専用デバイス内で保管。カード型やUSB型がある
(オフライン管理)
ユーザー故人の専用デバイスを専用のアプリやサイトに接続する
ペーパー
ウォレット
秘密鍵情報を紙に印刷して保管
(オフライン管理)
ユーザー紙に記載の仮想通貨情報を専用サイトに入力して残高確認・送金する

仮想通貨そのものは物理的な実体がないデジタル資産です。
そのため、仮想通貨の所有者が保管しているのは仮想通貨というより、仮想通貨にアクセスするための情報(秘密鍵や公開鍵などと呼ばれる)と言えます。

仮想通貨取引所の保管であれば、秘密鍵は取引所が管理しているため比較的容易に仮想通貨を取得できます。一方、取引所以外の方法で保管している場合、管理者がユーザー(被相続人)となるためアクセスが複雑です。

仮想通貨で莫大な資産を保有している人は、ハッキングリスクを避けるためハードウェアウォレットペーパーウォレットなど、オフラインで管理する傾向があります。オフラインの場合、貸金庫や家庭内金庫での保管が考えられます。金庫内に見たことがないデバイスや数字が羅列した紙がないか、慎重に確認してください。

2.仮想通貨取引所に問い合わせる

取引の可能性がある仮想通貨取引所を特定したら、各取引所に問合せて相続手続きを進めてください。

1.仮想通貨取引所に連絡する

各取引所のサイトにアクセスして相続発生の連絡をします。国内の取引所であれば、所定の必要書類を送付すれば相続手続きできるケースがほとんどです。

【注】残高証明書の発行を依頼しておく

取引所によっては、「相続手続き=残高の換金対応のみ」で、残高証明書の発行が手続きに含まれていないことがあります。取引所に連絡する際は残高証明書を依頼し、必ず「相続開始日」時点のものを発行してもらいましょう。

2.仮想通貨取引所に必要書類を提出する

取引所から指定された必要書類を用意して提出します。

必要書類は相続の状況によって異なります。一般的には、被相続人の戸籍謄本(または法定相続情報一覧図)、相続人全員の印鑑証明書、各社所定の手続き依頼書などの提出が求められます。

3.仮想通貨取引所が書類を確認。払い戻し手続きが行われる

取引所で書類の確認が終わったら、以下どちらかの方法で払い戻し手続きが行われます。

  1. 日本円に換金して出金する
  2. 仮想通貨のまま代表相続人の口座に移管される(相続人口座の開設が必要)

①の日本円に換金して出金する方法が一般的ですが、対応は取引所によって違います。詳細は各取引所にお尋ねください。

なお、相続した仮想通貨を換金(売却)して利益が出ると、相続税とは別に所得税が課されます。場合によっては税負担が非常に重くなるため、残高が多い場合は事前に税務署や税理士に相談しましょう。

【一覧表】各仮想通貨取引所の問合せ窓口

相続発生時は各業者の問合せ窓口に連絡をして、手続きを進めていきます。

以下に、国内の主な取引所の問合せ窓口をまとめました。

取引所名相続時の問合せ窓口
楽天ウォレットカスタマーサポートに問合せる
bitFlyerFAQページを参照のうえ、お問い合わせフォームより連絡する
Coincheck相続手続きページを参照のうえ、お問い合わせフォームより連絡する
GMOコインお問い合わせフォームより連絡する
Zaifお問い合わせフォームより連絡する
メルカリビットコイン取引サービス
※専用アプリでのみ取引を行う
相続時の手続きページを確認のうえ、お問い合わせフォームより連絡する※アカウント登録が必要
SBI VCトレードお問い合わせフォームより連絡する
BITPOINT相続時の手続きページを参照のうえ、お問い合わせフォームより連絡する
Bit Tradeお問い合わせフォームより連絡する

上記以外の業者については、金融庁の業者登録一覧で問合せ先を確認してみてください。

金融庁:暗号資産交換業者登録一覧(2024年5月31日現在)

仮想通貨取引所が海外にある場合

日本の金融庁・財務局で登録を受けていない海外の取引所に仮想通貨がある場合は、各国や各取引所の定めた手続きに従う必要があります。ただし、海外取引所であっても日本で登録を受け、日本語対応のサイトを展開している業者もあります。

世界最大級の仮想通貨取引所である「Binance」は、Binance Japan株式会社として日本で登録を受け、日本語対応の「バイナンスジャパン」を展開しています。

海外の取引所でも、まずはサイトにアクセスして日本語対応可能かどうかを確認してみてください。問合せ方法がわからず不安な場合は、海外資産や仮想通貨に詳しい税理士に相談する方法も検討しましょう。

3.仮想通貨ウォレットを調べる

仮想通貨取引所以外の方法で仮想通貨(の情報)を保管している場合は、各仮想通貨ウォレットによって調べ方が違います。種類別に見ていきましょう。

ソフトウェアウォレット保管の場合

ソフトウェアウォレットは、パソコンやスマホ、タブレットなどの端末上にあるアプリケーションです。通常、ソフトウェアウォレットへのアクセスには専用のパスフレーズが必要です。

専用パスフレーズがわからないときは?

「それらしいウォレットアプリを特定したものの、パスフレーズがわからない」人は、ウォレット業者に問い合わせてみてください。ウォレットの提供業者によっては、パスフレーズの復元が可能です。ウォレットにアクセスできたら、すべての資産残高を表示する画面をクリックし、仮想通貨の保有量や残高を確認してください。

残高を確認できた後は、各ウォレットのルールにしたがい換金するか、仮想通貨を取得してください。

そもそもスマホやパソコンにアクセスできないとき

原則として、スマートフォンやパソコンの通信業者・メーカーが端末のロック解除に応じることはありません。まずは「心当たりのある数字をいくつか入力してみる」「メモ帳や日記を確認する」などの対応で、パスワードロックの解除を試してみてください。

端末の種類によっては、特定の条件下で故人の端末に権限が得られる可能性があります。以下の方法も試してみてください。

  • Appleデバイス(iOS 15.2以降)の場合:相続人のうち誰かが「故人アカウント管理連絡先」が設定されていれば、その人がアクセス権をリクエストできる
  • Androidデバイスの場合:Googleのアカウント無効化管理ツールが設定されていれば、設定されている人に通知が送られる。また、以下のページから故人アカウントに関するリクエストを送信できる(審査あり) Google「故人のアカウントに関するリクエストを送信する」
  • 上記の方法でもロック解除できない場合:専門業者への依頼や市販のロック解除ソフトを利用するといった方法があるが、必ず解除できる保証はない

ハードウェアウォレット保管の場合

ハードウェアウォレットはカード型やUSB型の専用デバイスで、単体では残高の確認や送金ができません。仮想通貨を取り出すためには、ハードウェアウォレットを専用アプリやサイトに接続する必要があります。詳細は、ウォレットメーカーのサイトを確認してみてください。

また、ハードウェアウォレットへのアクセスにはPINコードが必要です。

PINコードがわからないときは?

ウォレットの種類によっては、リカバリーフレーズ(シードフレーズ)で秘密鍵を再生成できる場合があります。まずはメーカーに問い合わせてみてください。

PINコードもリカバリーフレーズもわからない場合は、原則としてハードウェアウォレット内にある仮想通貨情報(秘密鍵)を取り出せません。ただし、仮想通貨自体はハードウェアウォレットの中ではなく、ブロックチェーン上にあります。

たとえハードウェアウォレットにアクセスできなくても、他の方法で秘密鍵の情報を取得できれば、仮想通貨へのアクセスは可能です。他の方法で秘密鍵情報を取得できないか改めて確認してみましょう。

ペーパーウォレット保管の場合

ペーパーウォレットは秘密鍵などの仮想通貨情報が書かれた紙で、単体では資産残高の確認や送金ができません。

残高は、ペーパーウォレットに印字されているアドレス(口座番号のようなもの)を専用サイトに入力すれば確認できます。仮想通貨の種類によってアドレスの文字列や使えるサイトは異なるので、「ビットコイン アドレス」「ビットコイン アドレスで残高を確認」などと検索してみてください。

残高確認後は、ペーパーウォレットに記載の秘密鍵を使い、別のウォレットや取引所の口座に送金して仮想通貨を取得する流れになります。

仮想通貨の残高は相続税申告書の第11表に記入しよう

取引所や各ウォレットで確認した仮想通貨の金額が、他の相続財産と合算して相続税の基礎控除額以上になる場合は、相続税の申告が必要です。
相続税申告の際は、相続税申告書第11表(相続税がかかる財産の明細書)の付表4に記入してください。

<相続税申告書 第11表の付表4 記入例>

※相続税申告書では、正式呼称である「暗号資産」を使用してください。

AI相続での入力方法

無料の相続税申告ソフト「AI相続」を入力すれば、より簡単に相続税申告書を作成することが出来ます。

相続財産に電子マネーがある場合は以下のように入力しましょう。

財産の入力のページを表示

AI相続にログインして「財産の入力」のページに移動します。

「その他の財産」の編集ボタンをクリック

「財産の入力」画面にある項目の中の「その他の財産」の右側にある編集ボタンをクリックします。

「追加ボタン」をクリック

上記画像のような「その他の財産」の画面が表示されます。「+追加する」ボタンをクリックしましょう。

「財産の種類」のプルダウンメニューで「その他」を選択

「その他の財産」の詳細画面が表示されます。「財産の種類」のプルダウンメニューをクリックして「暗号資産」を選択してください。

必須項目を入力する

「財産の名称」の欄に「仮想通貨の名称」、「住所」の欄に「取引所や保管場所」を記載して、「単価」「数量」を入力してください。

「受け取った人」の項目を入力し「保存して戻る」

受け取った人の価格を入力し、最後に「保存して戻る」ボタンをクリックして終了します。

なお、取引所以外で保管している仮想通貨では、残高証明書を取得できません。この場合、証明書の提出や残高の記載はどうすればいいのかを国税庁に確認したところ、以下の回答がありました。参考にしてください。

「残高証明書を取得できない場合、書類の添付は必要ありません。相続開始日のレートに基づいた価格をそのまま相続税申告書に書いてください」

出所:国税庁への電話確認(2024年6月時点)

仮想通貨の相続は複雑です。デジタル資産や仮想通貨の相続について詳しい税理士など、専門家に依頼することも検討しましょう。

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執筆者

服部ゆい
京都市在住。金融代理店にて10年勤務したのち、2018年よりフリーライターとして独立。
金融・不動産・ビジネス領域の取材・執筆を中心に活動中。

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みなと相続コンシェル編集部

相続財産の評価方法はもちろん、これまでの専門家とは違った考え方で相続に関する情報を誠実かつ、わかりやすく発信していきます。 自分で相続税申告書ができる「AI相続」を開発・運営しています。

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